(956)顔の汗大(おお)きてのひらに一掃す/加藤楸邨(1905~1993年)
真夏の屋外なのか、冷房のない室内なのか、汗がダラダラと顔を流れています。想像すると、蒸し暑さに額の汗が今にも目に入りそうな様子が浮かびます。持っていたタオルで拭くのももどかしく、グイっと片手で汗を払いのけました。「大きてのひらに」というゆったりとした8音のリズムから「一掃」というスピードのある言葉…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。