家族の代わりに伴走 <女性と困難 支援の現場から(4)自立>
性被害やドメスティックバイオレンス(DV)、経済困窮などの問題に包括的に対応する「女性支援法」が4月、施行された。女性たちが直面するさまざまな課題には、家父長制や男女格差の影響が色濃く残る。東北の当事者や支援者の声から、困難の実相を見つめる。(せんだい情報部・菊池春子、丸山磨美)=6回続き=
支援制度のはざまで、孤立する女性を支える民間団体は少なくない。
生活困窮、ドメスティックバオレンス(DV)、離婚、家族間トラブル…。東日本大震災後、宮城県石巻エリアの女性支援を手がけてきたNPO法人やっぺす(石巻市)が運営するシェルターでは、さまざまな困難を抱え、住まいや居場所を失った女性らが生活の立て直しを図る。
「次のステップまでの道のりを整える場所」と共同代表理事の高橋洋祐さん(39)。2020年末に最初の部屋を確保し、ニーズの高まりに応じて部屋数を増やした。現在は石巻エリアに10室あり、23年度は母子ら17組31人が利用した。
宮城県沿岸部出身の実奈さん(30代前半、仮名)は昨秋から約3カ月、シェルターで過ごした後、1人暮らしを始めた。「普通の生活を続けること」が目標だ。
家庭は困窮し、高校進学を諦めた。母は過保護で過干渉。アルバイトや外出は制限され、友人関係にも細かく口を出された。親子関係が原因とみられるうつ状態が続き、自立の道を探る中でやっぺすにつながった。相談員は母からも話を聞き、タイミングを見計らって実奈さんのシェルター入居を進めた。
母と一定の距離を置いたことで、実奈さんの精神面は安定しつつある。生活保護を受けながら、就職に向けてパソコン関連のスキルの習得に励む。「今までできなかった勉強ができて楽しい」と笑顔を見せる。
「支援制度からこぼれ落ち、頼る人もいない。追い詰められ、物事を整理して考え、課題解決に動く力を失っている人も多い。一緒に問題を解き明かし、伴走すると、ぱぱぱっと自立に向けて進み出すことがある」と高橋さん。行政機関などへの同行から、赤ちゃんの予防接種の送迎まで細やかにサポートする。「家族や友人の代わりのような面がある」と言う。
事業の財源は民間からの助成などが中心で、綱渡りが続く。4月施行の女性支援法は、困難を抱える女性の自立などに向けた包括的支援や官民協働を掲げる。高橋さんは「行政は民間団体への財政支援を行い、支援ニーズに対して何をすればいいのか一緒に考えてほしい」と訴える。
自立を後押しする動きは、予期せぬ妊娠に悩む女性を伴走支援する現場でも見られる。
仙台市のNPO法人キミノトナリは20年8月、妊娠相談の窓口「にんしんSOS仙台」を開設した。「頼れるパートナーや親がいる場合、基本的に私たちの出番はない」と代表理事の東田美香さん(55)。相手の男性が姿を消したり、誰か分からなかったり。お金も住む場所もなく、虐待や親の再婚などで「帰る場所がない」ケースこそ出番だ。
年間の新規相談人数は約150人。うち3~5人は生活保護の申請に同行し一緒に住居を探すなど、生活していくための環境を整える手伝いをする。
「何か起きたとき、誰の力も借りないで生きていける人はいない」。東田さんらは女性たちの出産後も、祝い事や買い物などに家族のように関わり続ける。
やっぺす、キミノトナリ「にんしんSOS仙台」の情報は各ウェブサイトなどで確認できる。メールアドレスは、やっぺすがsodan@yappesu.jp、キミノトナリがkiminotonarisendaisos@gmail.com
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