石巻の彫刻家ちばさん、母校・武蔵野美大で初の個展 来月5~23日
石巻市の彫刻家ちばふみ枝さん(43)の個展「いくつかの波間」が9月5日、出身校の武蔵野美術大(東京)で始まる。母校での個展は初で、東京では15年ぶり。東日本大震災の被災地で、独特の視点で制作を続けるちばさんに大学が声をかけ実現した。空間を仕切るような彫刻や被災した実家で撮りためた写真を展示し、波のように捉えどころのない境界や時間、記憶を表現する。23日まで。
彫刻や写真など約10点を展示する。彫刻は2センチに満たない厚さの板に、波のような起伏や長年のモチーフであるカーテンを彫る。作品は飾られることでその場所を隔て、空間の連続性を強調する。
ちばさんはこれまで、空間や境界を主題に制作してきた。「空間を仕切るカーテンから『開放』もイメージさせたい。留め具がほどけたら壁になるのかな?というふうに、見る人に想像してほしい」と話す。
近年は「時間」に関心が沸いた。ちばさんは震災を機に帰郷。津波で被災した実家で制作を重ねてきた。
実家はワークショップなどで何度か一般公開もした。訪問者がそれぞれの家の思い出を語り、そこから自身の家にまつわる記憶を思い出した。「場所というものは時間を含む。当たり前のことかも知れないが、家を通して新しい視点が入ってきた」
個展は震災直後や近年に撮影した実家の写真も並べ、彫刻とどう響き合うかを試みる。ちばさんは「浮かんでは消える、記憶の捉えどころのなさを作品からにじませたい。何かを考え、感じ取るきっかけになればいい」と話した。
個展の作家にちばさんを推薦した同大彫刻学科の伊藤誠教授は「身の回りで感じたことを揺らぎのない独特の視点で作品や企画にしてきた。自身のできる限りの環境の中で続けている。作家を目指す学生に参考にしてほしい」と語った。
会場は同大鷹の台キャンパス(東京都小平市)。開館は午前11時~午後5時。日曜休館で、16、23日は開館する。初日は午後3時からアーティストトークも行う。入場無料。
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