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伝統的酒造り、無形遺産登録へ 「名誉」喜び 石巻の墨廼江酒造、平孝酒造

「かい入れ」の作業を行う墨廼江酒造の蔵人
「地元石巻の日本酒の価値が再認識されれば」と語る平孝酒造の平井社長

 日本酒などの「伝統的酒造り」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録される見通しとなった。東日本大震災を乗り越え、酒造りを守り続けてきた石巻地方の酒造会社も「名誉なこと」「地元の日本酒が再認識される契機になれば」と喜び、技術の継承に向けた決意を新たにしている。

 15日朝、墨廼江(すみのえ)酒造(石巻市千石町)では、蔵人らが酒米を蒸す作業を手際よく進めていた。沢口康紀社長(60)は登録について「先人の知恵と経験が今の酒造りにつながっている。あらためて(先人に)敬意を表したい」と話した。

 「先に和食が無形文化遺産に登録されたことで、海外では本格的な日本料理店が増えた。それで日本酒の認知も高まったのでは」と背景を分析する。少子高齢化や嗜好(しこう)の変化で国内消費が縮小する中、各蔵元の視線は海外市場に向く。同社も東南アジアなどの7カ国に輸出しており「登録が追い風になれば」と語る。

 「やっと世界に日本酒が認められたんだ-という思い。名誉なこと」と喜びを口にするのは、代表銘柄「日高見」で知られる平孝酒造(同市清水町1丁目)の平井孝浩社長(62)だ。

 日本酒のように、複数の発酵を同じ容器の中で同時に進める酒づくりは「世界中を見渡しても例がない」(平井社長)という。「石巻で造られる日本酒の価値が、地元で再認識されるきっかけになればうれしい。これからもいい酒を造りたい」と力を込めた。

 震災では両社ともに津波で浸水し、醸造設備などに大きな被害が出た。全国の酒造関係者らの支援で災禍を乗り越えたものの、震災後の人口流出を背景とした慢性的な人手不足が続いているという。沢口社長は「日本酒への関心が高まることで、地元の若者が仕事としての酒造りにも興味を持ってくれれば」と期待を寄せた。
(都築理)

<メモ> 
 ユネスコの評価機関が、日本酒や本格焼酎などの伝統的酒造りを無形文化遺産に登録するよう勧告したと5日、文化庁が発表した。勧告では、酒造りの知識と技術の伝承に加え、酒造りが社会にとって強い文化的意味を持つと評価。日本の社会文化的行事に酒が不可欠であるとも指摘するなど、登録に必要な基準を満たすとした。12月、南米パラグアイでのユネスコ政府間委員会で正式決定する見通し。

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