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台湾野球学び、飛躍の糧に 石巻地方の中学生3人、遠征振り返る

先発や抑えで登板した遠藤投手
打撃賞を獲得した沼倉選手
捕手として活躍する阿部選手

 10月20~26日に台湾・嘉義市であった中学軟式野球の秋季台湾遠征(IBA宮城支部主催)で、石巻市の中学生3人を含むチームが準優勝を果たした。3人は小学生時代に同市の鹿妻・子鹿クラブスポーツ少年団でプレーした仲間で、中学は別々の学校やリトルシニアで活動してきた。12~14日に静岡県であった「オールジャパンベースボールリーグ中等部全国大会」には中学生チームとしてクラブを再結成し、3位に輝いた。3人に大舞台を振り返ってもらいながら、これからの野球に向き合う姿勢を聞いた。(相沢春花)

遠藤羽琉投手(15)=渡波中3年=

<決勝降板も、多くの収獲>

 台湾遠征では先発を中心に抑えなどでも出場した。準々決勝では、阿部捕手とブランクを感じさせない息の合ったピッチングを見せて完投。「調子が良く、安定したペースで投げられた。三振も取ったが、みんなの守備がうまく、打たせて取ることができた」と振り返った。

 決勝で先発したが、チームのミスが重なり、先制を許した。立ち上がりもうまくいかず、本塁打も打たれ、三回で降板した。「コントロールミスで甘いコースに入ってしまい、流れを切れなかった。悔しかった」と語った。

 決勝は1-3で準優勝だったが、得た物も大きい。強打者が攻める戦い方と異なり、台湾チームはバントを積み重ね、堅実に点を狙ってきた。「台湾は日本で主流となっている戦い方とは違う采配で試合を進めてきた。視野が広がり、確実に経験値になった」と手応えを語った。「試合以外でもプレゼント交換をしたり写真を撮ったりして交流を深められて楽しかった」と話す。

 渡波中では野球部に所属し、主に投手を担ってきた。部活や全国大会などを通して見えてきた課題は、制球力と変化球の精度。「コントロールがうまくいかず、取りたい場面で空振りが取れなかった。ボールにも切れがない」と厳しく向き合う。

 硬球での球速についても「直球で約125キロで、早くはない。140キロ台を投げられるようになりたい」と目標を高く持つ。

 高校でも野球を続ける予定で、新たな環境でも変わらず「仲間と協力し、楽しく野球をしていきたい」と話す。

沼倉陽大選手(14)=牡鹿中3年=

<打率4割超えで打撃賞>

 全国大会、台湾遠征の両大会では持ち味の長打力とミート力を生かし、勝利に貢献した。全国大会の2回戦は相手に2点差をつけられて最終回を迎えた。1点を返し、1死満塁の場面で回ってきた自らの打席。直球をじっと待ち、犠牲フライで同点にした。後続も続き、サヨナラ勝ちした。

 「いい打撃もあったが、打てなかった球もあった。1本で試合を決められるようになりたい」と振り返る。

 台湾遠征の5試合で約20打席に入り、打率は4割を超える。フェンスに迫る二塁打も4本ほど放ち、堂々の打撃賞を獲得した。

 一方で、課題も再確認した。守備のミスが多く、緊張や焦りで実力を発揮できなかった。「意識が散漫で、一球一球への気持ちが雑」と自己分析。「周りの目に気を取られず、大きな声を出して仲間の返事を聞き、緊張をほぐしていきたい」と話す。

 高校では、技術の向上とともに仲間から信頼される選手を目指す。「当たり前のことを当たり前にすることは意外と難しい。野球をする前提として、道具や礼儀を大切にしていきたい」と語る。

 現在は受験勉強と並行し、石巻リトルシニアで練習を続けながら、大舞台で学んだ技術などを後輩に伝えている。

 戦いを共にした2人について「(遠藤)羽琉君は心の強いピッチャーに成長していた。(阿部)希世輝君は動きが俊敏で頭の切れる選手になっていた。2人とも安心感があり、頼れる存在だった」と話す。「2人とも野球を続けていて良かった。次は、高校の東北大会で再開し、戦いたい」と期待を込める。

阿部希世輝捕手(15)=万石浦中3年=

<磨いた投手リード、実践>

 全国大会と台湾遠征では3年ぶりに遠藤投手とバッテリーを組んだ。「小学生の頃よりコントロールが良く、安心してプレーできた」と話す。

 一方、台湾遠征では、バントの多い戦法や強打者に苦戦も強いられた。「配球を考えるのが大変だった。ピンチの時は緊張したが、いつもより頭を使う試合ができた」と語る。

 打者として印象に残るのは、台湾チームとの3試合目。最終回、5-6の1死満塁で打順が回ってきた。「アウトにはしたくない」と、自分を奮い立たせ、打席に入った。狙っていた直球を捉え、二塁打を放ち、見事に2点を追加。勝利の逆転打となった。「チームのために打ててうれしかった」と振り返る。

 小学1年で野球を始め、小学5年からは捕手を務める。6歳年上で捕手をしていた兄の、二塁への送球や投手をリードする技術の高さに憧れた。

 中学で硬式野球に進み、現在は宮城北部リトルシニア(大郷町)に所属する。捕手として、肩の強さや送球の正確性、ブロッキング技術に磨きをかけた。「投手をリードする力も付き、どんな試合でも怖がることなく挑める」と成長を実感する。

 高校はもっとレベルの高い野球を求め、県外への進学を予定する。「環境やメニュー、練習のつらさも変わるが、緊張感を持って挑みたい。最初の目標はレギュラーメンバーになり試合に出ること」と意気込んでいる。

 全国大会、台湾遠征を共にした2人には「一緒に野球ができて楽しかったし、うれしかった。次は甲子園で会いたい」と大舞台での再会を夢見る。

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