2024ニュース回顧 取材ノートから > 空自70年目の松島基地 米軍訓練、よぎる緊張感
機能強化の懸念広がる
1954年発足の自衛隊が今年7月1日、70周年を迎えた。中国の軍備増強や北朝鮮の核・ミサイル開発などで安全保障環境が厳しさを増す中、航空自衛隊松島基地(東松島市)のある石巻地方が緊張に巻き込まれはしないか。そんな思いがよぎった1年だった。
4月、米国製の大型無人偵察機グローバルホークが同基地に突如飛来した。所属する空自三沢基地(青森県三沢市)が悪天候などで使用できない場合に備えた訓練だった。
東松島市は長年、基地との「共存共栄」を掲げ、自衛隊と良好な関係を維持してきた。それでも本紙で初めて見聞きする無人機に「気味が悪い」(40代男性)などと吐露する市民は少なくなかった。隣の石巻市でも「知らない間にあちこち飛び回るのは怖い」(70代男性)との声が聞かれた。
6月13日には、米軍の大規模統合演習の一環でF16戦闘機2機が降り立った。米軍が同基地で訓練するのは初めて。騒音の増大などはなかったようだが、米軍訓練の常態化を懸念する声が広がった。
記者は3月まで青森県の地元紙に勤務し、米軍三沢基地の取材も経験した。当時、米軍や空自の取材で実感したのは、いま日本の安全保障が岐路に立たされているという現実だった。
南西諸島有事を念頭に置き、米軍と自衛隊の運用一体化が着実に進み、米軍が自衛隊基地や民間空港、港湾を利用する例が増えている。松島が米軍訓練の拠点となったのもその一環であり、今後、国からさらなる基地機能強化を強いられるのではないかと住民が不安に思うのは当然だろう。
基地取材で立地自治体に話を聞くと「外交と防衛は国の専権事項」という言葉が判を押したように出てくる。6月の渥美巌東松島市長の定例記者会見の時もそうだった。今後、基地機能が強化される可能性について尋ねると、市長は否定的な見解を示した上で「国の専権事項。最終的に政府が決めること」と回答した。
ただ、事故や事件が起きると真っ先に被害を受けるのが市民である以上、立地自治体が説明責任を回避できるわけではない。同じように、地元の報道機関も基地の動向を常にチェックし、より分かりやすい情報を住民に提供する必要があると感じている。
軍事や防衛に関する問題は一般にはなじみが薄く、基地報道も「機密」という厚い壁にぶつかりがちだ。それでも粘り強く取材していきたいと思う。(都築理)
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