海中転落事故、多発 救命胴衣着用「徹底を」 今月既に3件、2人死亡 石巻海保
石巻海上保安署管内で今年に入り、漁業者の海中転落事故が相次いでいる。わずか半月で3人が転落し、うち2人が命を落とした。事故件数は既に昨年1年間の半数に上る。死亡したうちの1人は救命胴衣を着けていなかった。同署は緊急事態と捉え、漁業者に対して生存確率を高める救命胴衣の着用徹底を強く訴えている。22日は女川町の漁港を訪れ、漁業者に直接呼びかけた。
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同署と石巻署によると、石巻市渡波漁港で5日、1人で出航しようとしていた男性が海に転落し、死亡した。10日には女川町指ケ浜漁港で、男性が船から岸壁に上がろうとした際に転落し、溺死した。救命胴衣は未着用だった。16日には同町尾浦漁港沖の銀ザケ養殖のいけすで、作業中だった男性が転落。数日入院したが、命に別条はなかった。3人はいずれも70代。
救命胴衣着用の呼びかけは22日、指ケ浜漁港と尾浦漁港で実施した。石巻海上保安署、県漁船海難防止協議会など4団体の担当者ら計約10人が参加し、海中転落の危険性や転落時の対処法などを伝えた。
担当者は「動きづらくても自分の体に合った物を着用してほしい。破損やほつれがないかなど定期的な点検も必要だ」と強調した。転落した場合は「体が冷えると動きが鈍り、船に上がるのが難しくなる。船尾などに縄ばしごを取り付け、捕まって体力と体温を温存しながら救助を待ってほしい」と話した。
また、携帯電話を身に付けたり作業場所に置いたりすることも推奨。緊急時に118番することで、海上保安署に発信場所を知らせ、救助を迅速に呼ぶことができることを紹介した。
説明を聞いた同町指ケ浜で釣り船と養殖業を営む阿部圭尋さん(35)は「釣り船のお客さんには救命胴衣着用を徹底しているが、自分1人の際は着けない時もある」と吐露。「危険なのは分かっているが、着けると作業がしづらい。しかし、呼びかけを聞いて着用をおろそかにしてはいけないと思った。今後はしっかり着用したい」と話した。
石巻海上保安署の村上伸悟次長は「漁業者の事故が多発しているので、緊急的に呼びかけを行った。寒い時期は体がこわばり、転落しやすい。海、陸地にかかわらず作業時は必ず救命胴衣を着用し、転落対策をしてほしい」と語った。
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