石巻舞台のNHKドラマ「水平線のうた」、あすと8日放送 震災遺族の遠藤さんも登場

石巻市を舞台に東日本大震災を経験した人々を描くNHKドラマ「水平線のうた」が3月1、8日に放送され、震災で3人のわが子を失った同市の遠藤伸一さん(56)が登場する。ドラマを通じ「あれから残された、生きてしまった14年がどんなものだったか知ってほしい」と願う。
「水平線のうた」は、震災の喪失と向き合う人々のヒューマンドラマ。主演は俳優の阿部寛さん。女川町の臨時災害放送局をモデルにした2013年のドラマ「ラジオ」を手がけた岸善幸さんが演出を担当する。
遠藤さんは震災で渡波地区の自宅が津波に襲われた。家にいた長女花さん(13)、学校から連れ帰った長男侃太(かんた)君(10)、次女奏(かな)さん(8)=いずれも当時=が犠牲になった。3人を残して家を離れてしまった後悔は「くたばるまで引きずる」と言う。
罪の意識は消えず、ドラマ出演にも葛藤を抱えた。打診を受けた当初は「俺には無理だ」と断ったが、被災地の今を伝えたいという制作陣の熱意に押された。「そんな風に使える命もあるのなら」と根負けした。
ドラマには一部ドキュメンタリーのパートがあり、自宅跡地近くに支援者が整備した野外音楽堂で撮影に臨んだ。阿部さんと約1時間にわたって対話し「人の思いに支えられて生きてくることができた」という被災後の歩みを語った。阿部さんは言葉を選んで質問を重ね、涙を流しながら耳を傾けていたという。
阿部さんは震災で妻と子を亡くした男、大林賢次を演じる。大林は亡くなった人の霊が乗客として現れるという話を聞き、妻子に会いたい一心からタクシー運転手になる。
遠藤さんは「会いたいという思いは同じだ。毎日『頭なでてえ』『ほっぺさ触りてえ』と考えている」と現在の心境を明かし「被災地の目に見えるものだけが全てではない。心の中にある悲しみや、寄り添ってくれた人への感謝、災害から生き抜いてほしいという思いを感じてもらいたい」と語った。
ドラマはNHK仙台放送局制作。前編は3月1日、後編は8日に、それぞれ午後10時から放送。
石巻市役所1階で17日まで、NHKドラマ「水平線のうた」番組展が開かれている。物語のあらすじやキャスト、制作陣などを6枚のパネルで紹介、阿部さんが寄せたコメントも展示する。
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