子育てと介護の縁側・今日も泣き笑い(33) 謝る勇気 娘を信じて待つ難しさ
【石巻市・柴田礼華】
ある日、ソファに座っている義母レツさん(87)が「痛い、痛い」と言っている声が聞こえました。見に行くと、ソファに無理やり割り込んだ長女あま音(5)が、足でレツさんの体をぐいぐい押しやっています。近くにいた夫と私がほぼ同時に気付き「やめなさい」と伝えるも、すぐにはやめないあま音。レツさんの反応を面白がっているようです。
認知症を発症しているレツさんは、たまに怒りの感情が爆発することがあります。とにかく2人を引き離そうと、あま音をソファから下ろし、「おばあちゃんの骨が折れたり、ソファから落ちたりしたら危ないでしょ!」と大きな声で叱るとあま音は号泣しました。
■つい怒り大声に
その数日前も似たようなことがありました。あま音がふざけて振り回したチラシが私の目に当たり「痛い!」と叫ぶと、ばつの悪そうな顔をするも、謝りはしません。わざとじゃないのは分かりますが、これが友だち同士で起きたことだったらと思うと、放っておくわけにいきません。
居合わせた夫が謝るよう促すも無言。「わざとじゃなくても、人に痛い思いをさせたらごめんなさいでしょ」と重ねて私が伝えてもやっぱり謝りません。私の怒りは募り、「そんなことしてたら、周りに誰もいなくなるよ。お母さんはもうあまちゃんと一緒にいたくない」ときつい言葉をかけてしまいました。
珍しく怒りモードの私に「いやだー。一緒がいいー」と号泣するあま音。その場をいったん夫に任せ、むきになって大声を出したことに自己嫌悪しながら、少し頭を冷やそうと携帯電話でお笑い番組を見ていると、10分ほどたったころでしょうか。夫に声をかけられ、その後ろから顔をくしゃくしゃにして「おっかー、ごめんー」と泣きながら謝りに来たあま音の姿。彼女を抱きしめて「分かった。もういいよ」とその場は手打ちにしたのですが、今度はレツさんが嫌がることをして謝らない態度に腹が立ちます。数日前の自己嫌悪も忘れ、またもや大声をあげる私。その先に待つものは再び自己嫌悪です。
■忘れる幸せも?
娘たちには自分の意思を大切にして、のびのび育ってほしい。だからといって、わがままで自己中心的な人にはなってほしくない。本人の気持ちの準備ができて、自ら謝るタイミングを信じて待つべきなのでしょうが、なかなか待てない未熟な私です。
夜、子どもたちが寝ついてから、義父せんじいと義母レツさんに「自分の子どもたち(夫や夫の姉たち)がわがまま言ったり、悪いことした時はどんなふうに叱っていましたか?」と聞くも、「子育てはじじちゃんとばばちゃん(夫の祖父母)に任せてたからなぁ」とのことで参考にならず…。
ちなみに、ソファでの一件。しばらく泣いていたあま音が覚悟を決め、「おばあちゃんに謝りに行く」と言うので、ソファにいたレツさんのところに一緒に謝りに行ったところ「は? なんのこと?」とすっかり忘れてしまっていたレツさん。忘れることは幸せに生きる秘訣(ひけつ)かもしれません。
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