第4部・都市のリスク(3)見えぬ足元 集合住宅、浸水に弱さ

マンションやビルが林立する仙台市中心部。浸水への備えが必要な場所は少なくない

 約2メートル浸水した地下駐車場に乗用車などが沈む。地下の配電盤が水に漬かり停電を引き起こす。エレベーターも水没して使えない。

 昨年10月の台風19号豪雨で内水氾濫した仙台市のJR・地下鉄仙台駅周辺。行き先を失った雨水は、周辺に林立するマンションにも押し寄せた。

 「大事な設備の多くが地下にある。土のうを積んだが役に立たなかった」。駅東口に近い若林区の中層マンションに住む男性が肩を落とす。全面復旧には1週間を要した。

 近くのくぼ地状の道路にたまった水が流れ込んできたのが原因だった。大雨のたびに水がたまり、区は広瀬川に直結する専用管に送るポンプを数台設置していたが「排水が追い付かないほどの雨量だった」(道路課)という。

 駅を見下ろす高層マンションの足元にも水が迫った。青葉区では共用地下室が浸水したり、下水逆流の恐れからトイレが使えなくなったりした棟があった。いずれも市が独自に作成、公表している内水の浸水想定区域近くに立地していた。

 建築基準法は「国民の生命、健康、財産の保護」を掲げて地震や火災に備えた基準を定めるが、水害に関する規定はない。1級建築士でもある佐藤健東北大災害科学国際研究所教授(地域防災)は「水害の危険がある場所に住まない、敷地として選ばない前提があるためだ」と説明する。

 マンションは、電気設備や駐車場などの共用施設を地下や1階に置く物件が多い。地上部分を最大限利用するためだ。設計上の浸水対策に不安があれば、住民らの自衛策も必要になる。

 有効策の一つは止水板の設置。市は2015年9月の宮城豪雨などを受け、設置時に50万円まで費用を補助する制度を16年度に開始した。マンションなど9件の補助実績がある。

 「台風19号後は問い合わせが多い」(市下水道調整課)が、20年度の予算額は前年度並みの約200万円にとどまる。補助は数件が限度となる。

 市が物件の安全性能や防災活動を評価する防災力向上マンション認定制度も、水害は想定していない。東京都墨田区の同種制度が、想定される浸水の深さが浅い場所への立地を加点要素とし、4月から止水板設置を評価項目に加えるなどするのとは対照的だ。

 台風19号は高層建築物も水害と無縁でない現実を突き付けた。不動産業界では、説明義務のある重要事項に含まれていない水害リスクを、あえて顧客に説明する動きが広がる。

 山一地所(仙台市)は宮城豪雨時に管理するマンションの機械式駐車場が水没したのを機に、賃貸・売買時に過去の水害を説明した上で契約の可否を決めてもらっている。「隠すことによるリスクの方が大きい」と判断した結果だった。

 真山啓朗賃貸仲介課長は「水害リスクを顧客側から尋ねられることは少ない。仙台はこれまで甚大な水害がないため意識が低いのかもしれない」と話す。

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る