台風19号の襲来から12日で半年を迎えた。東北の被災地の復旧復興は始まったばかりで、教訓を生かすための取り組みは試行錯誤が続く。恵みと災いの両方をもたらす「水」と私たちはこの先、どう付き合えばいいのか。最終部の第5部は共生のための視座を考える。
(治水のゆくえ取材班)
山河を鎮める宮司の祈りが静かな山あいに響く。
昨年10月の台風19号(東日本台風)で大規模な土砂崩れが発生した宮城県丸森町の廻倉(まわりぐら)地区。今年3月中旬、住民ら17人が集まって治山祈とう祭を開いた。
土砂に巻き込まれた3人が亡くなり、半年たった今も1人が見つからない。里山の木々は根こそぎ流出し、荒涼とした姿をさらす。
「気持ちは落ち着かないが、力を合わせて安心して暮らせる廻倉にしないと」。呼び掛け人の佐藤勲さん(75)は心を砕く。
樹木の根は山地の表土をつなぎ留め、枝葉や土壌は雨水を蓄えて川への流れ込みを緩やかにする。水源涵養(かんよう)と呼ばれるこの機能から、森林は「緑のダム」とも称される。
廻倉の崩落現場は2002年の山火事で樹木が焼失し、県が杉などを植えて水源涵養のための保安林に指定した。台風時の樹齢は16年で「若いなりに根が張っていたはず」(佐藤さん)が、期待は外れた。
昨年11月に現地調査した森林総合研究所(茨城県つくば市)の浅野志穂治山研究室長は「表土層から水の染みにくい基岩層まで50センチ程度と薄く、表土層で地下水位が上昇して土壌が崩壊した」とみる。総雨量約600ミリという年間降水量の4割に達した雨に、緑のダムは耐え切れなかった。
県は崩壊した山腹を階段状に整えて不安定な土砂をとどめる復旧工事を急ぐ。6月に着工し来年春の完了を目指すものの、表土の流出で「植林しても木が育たない」(県森林整備課)。原状回復には長い年月がかかる。
明治期から昭和初期までの木材需要が多かった時代は、各地で乱伐による「はげ山」が広がった。雨水は山に浸透せず川へと一挙に下り、当時の大規模洪水の一因だったとされる。
国内山地の約4割を占める人工林は現在、樹齢50年以上が半数に上る。宇都宮大農学部の執印康裕教授(森林科学)は「丸森町を含め、国内の治水に関わる森林機能は既に限界値に迫る高いレベルにある」と指摘するが、昨秋の豪雨は多くの山腹に深い爪痕を残した。
丸森町森林組合長の作間淳一さん(62)は、樹齢60年級の杉の大木が阿武隈川へと斜面を滑り落ちる光景に目を疑った。「治山の常識は今の雨には通用しないのか」と途方に暮れる。
町内の土砂崩れは通報分だけで150カ所を超えた。復旧・復興基本方針で「治山による安全・安心の確保」を掲げる町にも確たる展望があるわけではない。
町は3月、山地への太陽光パネル設置時に町との事前協議や住民説明会を義務付ける条例を制定した。「山をむやみに切り開けば森林機能が低下して土砂崩れや洪水を招く」という住民の不安を受けての措置だったが、既設の太陽光パネル用地で今のところ目立った被害はない。
「治山による治水の効果を測るのは難しいが、やれることを一つずつ始めるしかない」。町農林課の担当者は手探りで解を求める。
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