第4部・都市のリスク(6完)東北大名誉教授 大村達夫氏に聞く

 昨年10月の台風19号は、都市も水害と無縁ではない現実を改めて浮かび上がらせた。仙台市下水道マスタープラン検討委員会委員長を務めた東北大未来科学技術共同研究センターの大村達夫名誉教授(環境水質工学)に都市型水害の課題を聞いた。

マンションにも死角

 仙台市の下水道は歴史が古く、雨量想定が小さい下水管が今も一部で使われている。都心部はアスファルトやコンクリートに覆われた地面が増え、雨水の地下浸透が見込めない。降った雨の大半が下水管に流入するため、想定以上の豪雨時にあふれるのは当然と言える。内水氾濫の発生自体を止めることはできない。

 現在の仙台の下水道の雨量想定は10年に1度の大雨(1時間雨量52ミリ)。これより想定の小さい古い下水管を早期に全て更新するのは現実的でなく、地下に雨水の貯留施設や幹線を新設して補っている。ハード面だけに頼らず、土のうや止水板でしのぐなどの自助を組み合わせた浸水対策に、行政と住民が一緒に取り組む必要がある。

 冠水が頻発しているJR仙台駅西口周辺の被害を最小限にするには、下水道を管理する市からの積極的な情報提供が求められる。市民にも迅速に情報を伝えるシステムを構築すべきだ。

 他都市では下水管の水位をリアルタイムで計測する機能性マンホールの導入例がある。いつ、どこで洪水が起こりそうかをある程度予測できる。下水道はアナログな施設だが、今ある情報技術を駆使し、時代の要請に応じたものに変えていかなければならない。

 台風19号では、川崎市の武蔵小杉駅周辺の高層マンションへの浸水が耳目を集めた。マンション水害は資産価値に関わるため秘匿されがちで、実態が見えづらい。地下に共用施設や電気設備が置かれている場合が多く、浸水すると住民生活への影響は甚大だ。

 仙台でも今回、マンション水害が少なからず発生した。止水板設置のほか、電気設備については設計段階で水密構造にするのも有効だろう。想定を超える水害が多発している以上、マンションは水害に強いといった思い込みや先入観は改めてほしい。

 都市河川の景観問題は、水害のリスクと地域でどう折り合いを付けるかに尽きる。自然豊かな美しい河川景観は住民に癒やしの時間を与え、生活を豊かにするが、景観保全が治水に優先すると川沿いの住民はリスクを背負いかねないことを注意深く見極めなければならない。時代とともに景観が変化し得ることを受け入れる姿勢も必要だ。

 仙台の下水道の起源は藩制時代の四谷用水にさかのぼる。当時は感染症予防など衛生面への対処が急務だった。昔から人間は災禍を教訓に文明を発展させてきた。想定外の事態に直面した時こそ、被害を繰り返さないための知恵を絞るべきだ。都市型水害という今日的な課題と向き合う住民ら一人一人の覚悟が問われる。

[大村達夫(おおむら・たつお)氏]東北大大学院工学研究科博士課程後期修了。岩手大工学部教授などを経て2013年に東北大未来科学技術共同研究センター教授に就任。16年から現職。専門は他に都市環境学。71歳。愛知県出身。

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決壊 台風19号・治水のゆくえ

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