共生の宿命(6)青森・東通 狂った計算、耐える日々

原発工事の長期停滞で整備が道半ばの住宅地「ひとみの里」。東通村役場(奥右)に隣接する=10月下旬

 東京電力福島第1原発から約430キロ離れた本州最果ての村が、原発事故の「被害」にあえぐ。

 青森県東通村はこの10年近く、東電東通原発の新設工事と東北電力東通原発の運転が止まり、財政と経済が危機に直面している。

 村の2017年度決算は歳入不足が1億円近くになる見込みだった。村が頼ったのは「原子力ムラ」だ。

 村の中心部づくりのため田地や原野に整備した宅地「ひとみの里」の一部を東北電に1億円で売却した。村の担当者は「赤字決算をぎりぎりのところで逃れた」と振り返る。

 原発事故前は100億円ほどだった村の予算規模は12年度以降、原発建設を当て込んだ起債ができなくなったため60億~80億円まで大幅に縮小した。それでも綱渡りの財政運営が続く。

 18、19年度は企業版ふるさと納税で東電、東北電が各4億円、計8億円を寄付して村財政を助けた。

 19~21年度は国の電源立地地域対策交付金のうち、東電原発分の長期発展対策交付金から計10億円を特例で受け取る。本来は発電所が営業運転を始めた翌年度から廃炉までの期間で受け取る交付金を前借りした形で、全国的にも珍しい。

 東電は17年3月の運転開始を目指して11年1月に着工したが、原発事故によりわずか2カ月で工事が中断した。村経営企画課は「原発完成後の18年度に約50億円の固定資産税収があることが、財政運営の前提になっていた」と説明する。

 東通原発について東電は17年、自社単独開発から共同事業者を募る開発に方針転換した。現在も「(共同事業の)検討を継続している状況」(東電)で、早期の工事再開は見込めない状況だ。

 原子力施設が集中する青森県下北半島の立地市町村の中で、村の経済の落ち込みは著しい。県によると、事故前の10年度と最新の16年度を比較した市町村内総生産の増減率はむつ市のマイナス2.5%、大間町の同7.7%に対し、東通村は同60.2%と群を抜く。

 「宿泊者がゼロの日が何日も続いた。他の仕事をしたり、蓄えを切り崩したりして何とかしのいできた」

 原発作業員向けの旅館を家族で経営する南川大さん(28)が苦境を明かす。この10年間に近所のコンビニやガソリンスタンド、弁当店、建設会社が次々とつぶれた。「原発の再稼働や工事再開までの辛抱」との思いで耐えている。

 東北電東通原発の再稼働に向けた道のりも険しい。14年6月に新規制基準適合性審査を原子力規制委員会に申請したが、敷地内外の断層の評価が定まらず審査が長期化している。

 東北電の経営環境も変わった。16年に電力小売りの完全自由化が始まり、東通原発の建設費を折半するなど協力関係にあった東電は今や電力販売のライバル。発電量の半分を東電に融通する契約がある東通原発には「『お荷物』になりかねない」(東北電社員)との声も漏れる。

 原発推進を切望する東通村の姿は、同村尻屋崎で冬も放牧され、風雪に耐えて春を待つ寒立馬(かんだちめ)と重なる。

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