東日本大震災の津波で沿岸部の市街地は甚大な被害を受けた。多くの自治体が復興計画で目指したのが、コンパクトなまちづくりだ。大規模なかさ上げ工事を展開した岩手県陸前高田市、大胆な移転集約を進めた宮城県山元町の10年をたどり、課題や教訓を探る。
令和という新時代の幕開けと同時にやっと訪れた新たな暮らしに、安堵(あんど)と寂しさが入り交じる。
震災で被災した陸前高田市の主婦高橋武子さん(79)は2019年5月、最大12.3メートルかさ上げされた高田地区の市街地に戻り、住まいを再建した。
「震災前の面影はないけど、坂がなくて暮らしやすい。スーパーも近くて不便はない」
約87ヘクタールのかさ上げ地には商業施設「アバッセたかた」が17年に開業し、市民文化会館などの公共施設も次々に復旧した。飲食や菓子など100程度の店や事業所が営業を始めた。
高橋さんが結婚を機に一関市から移り住んだのは半世紀前。住宅や商店が立ち並ぶ地域で、知り合いとおしゃべりに花を咲かせた。
震災で高さ15メートル前後の巨大津波にのみ込まれた街は、市役所などわずかな建物の最上部だけ残して水没し、市内の死者・行方不明者は1713人に上る。高橋さんも多くの友人を失った。
高台の仮設住宅などで8年間暮らし、新居を構えたかさ上げ地には住宅が約50戸が点在する程度だ。長期化する工事の完了を待てず、隣近所の住民はばらばらに再建した。
自治会も、近所とのお茶飲みもない。「気持ちはぽつんと一軒家。みんなも戻ると思っていたのに」。大切にしてきた地域のつながりは途切れたままだ。
陸前高田市は1955年、3町5村が合併して誕生した。三陸沿岸では珍しく平地が広がり、街道が交わる交通の要衝だった。市制施行以来、人口は減少の一途だった一方で、中心部への流入が続き、市街地は海側に広がった。
市は復興計画で、震災前と同水準の人口2万5000台を目標に掲げ、ゼロからのまちづくりに着手した。
壊滅した中心部の高田地区、藩制期からの町並みを残す今泉地区で、高台造成や大規模かさ上げを伴う被災地最大級の土地区画整理事業を展開。施工面積は高田が約186ヘクタール、今泉が約112ヘクタールで事業費は計1500億円を超える。
盛り土、切り土の総量は東京ドーム9個分。地元の気仙小や旧気仙中の校歌に「愛宕の山」と歌われた高さ約120メートルの山を切り崩し、2地区で計約125ヘクタールのかさ上げ市街地を築いた。
造成工事は大詰めを迎え、地権者への宅地引き渡しが年内に完了する。だが、金融機関、医療機関などの生活インフラは整っていない。利用されている民有地は高田地区で25%、今泉地区で19%にとどまる。
理容師柳下紀昭さん(44)は今年6月、プレハブの仮設店舗を畳み、高田地区のかさ上げ地に店を移転した。
午後6時に店を閉めると外は真っ暗。「震災前はシャッター通りでも建物があった。今は空き地ばかり」。やりきれなさがこみ上げる。
震災から9年9カ月。人口は震災前に比べ2割減り、1万9000を割り込んだ。「売地」「貸地」の看板ばかりが立つ。
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