「復興再考」第6部 まちづくり(4) 陸前高田 不安/ハード復旧の更新期集中

かさ上げした市街地で再建が進む新市庁舎(左)。中央の災害公営住宅、右奥の市民文化会館は既に完成した=3日、陸前高田市

 わずか5票差。「正直言って駄目だと思っていた」
 東日本大震災後、ゼロからのまちづくりを進めてきた指揮官がかすれた声で薄氷の勝利に触れ、神妙な面持ちで選挙戦を振り返った。
 2019年2月の陸前高田市長選は、20年度までの復興・創生期間後の行財政運営が争点の一つとなった。3選を果たした戸羽太市長(55)の対立候補は元岩手県幹部。今後の人口減少を強調し、震災で全壊した市庁舎の再建が「身の丈に合わない」と批判した。
 建物の延べ床面積は震災前の一部4階建てとほぼ同じだが、有権者は「7階建て」に敏感に反応した。
 「施設や市街地の未利用地など新しいまちが見えてくる中で、市民の将来不安が表面化した」。市議会復興対策特別委員長の大坂俊さん(69)は、大接戦の背景をこう読み解く。
 「過大な維持管理費の発生は今後の行政、市民に負担になる。精査して整備計画を見直してほしい」
 大坂さんは市議会で、市に事業の適正規模のありようを問いただしてきた。11年9月に市議となり、12月定例会で復興計画案に賛成したが「市も議会も復旧水準がどうあるべきかを考える余裕がないまま進んだ」との反省があった。
 戸羽市長は「基本的には災害復旧事業。市民、特に子どもたちの要望がある。将来に夢を持てる部分も大事にしなければならない」と答弁。議論は平行線をたどった。
 市民会館、体育館、図書館、野球場…。中心部が壊滅した市では被災した公共施設の再建が進む。災害公営住宅(10団地、計594戸)も加わり、19年度末時点の総延べ床面積は約17万3000平方メートルで震災前の10年度末より12・8%増えた。
 コンパクトなまちづくりの狙いとは裏腹に住宅の高台移転が進み、下水道と上水道・簡易水道の総延長は震災前より2、3割長くなった。建物も都市基盤もそれぞれ同じ時期に整備され、更新期が集中しかねない。対照的に人口は15年から30年間で4割減るとの推計もある。
 被災地の公共施設の復旧を巡り、11年5月の岩手県震災津波復興委員会の会合で、事務局の県沿岸広域振興局は「ケースによっては市町村が連携して共同での配置も視野に置く必要がある。適切なアドバイスをしたい」と述べている。
 だが、動きはなかった。振興局の元幹部は「一斉に造り直すからこそ可能性を探れると考えたが、県がここだと決める筋合いではない。それ以上踏み込めなかった」と打ち明ける。
 陸前高田市では19年度決算で、市の貯金に当たる財政調整基金が震災前の6倍近くに増えた。復興事業費を充てたり、公共施設の流失で維持管理費が激減したりして支出が抑えられた。
 ハード復旧に見通しが立ち、復興は新たな段階に入る。戸羽市長は「公共施設が悪者だと考えていない。地域や経済活性化を図れるよう、皆で知恵を集めていくべきだ」と強調する。
 前例のない巨額事業は何をもたらしたのか。市は復興計画の事業完了後の21年度、検証作業を総括する。

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