プレハブの陸前高田市役所4号棟の2階。地権者の承諾が得られるたび、担当課の壁に張られた図面の区画が塗りつぶされていく。
東日本大震災で壊滅的な被害を受けた高田、今泉両地区の再生を目指し、市は計約300ヘクタールという被災地最大級の土地区画整理事業に取り組んだ。障壁となったのが土地の権利だ。
区画整理は権利関係が複雑なため、20年近くかかるケースが一般的。住居を失った被災者が20年も待てるわけはなく、市は地権者の承諾を得て換地先が固まる前に着工するなどスピードアップを図った。
ただ、地権者だけで2000人超。内陸部にある法務局に通い台帳から情報を集め、所有者に連絡を取る。所在不明で追跡が必要だったり、相続の手続きをしていなかったり。一つの土地に法定相続人が数百人いてたどれない例もあった。
被災自治体はどこも期間短縮を試みたが、整理事業の施工期間が平均約5年かかった理由の一つがここにある。
2013年に本格化した陸前高田市の作業を応援職員や民間業者が支えた。岩手県から3年間派遣された熊谷和典さん(52)は「自宅に訪問して、何度も手紙を置いてきたこともある」。九州まで出向いた同僚もいた。
「起工承諾を省略できるよう、一時的に自治体が地権者に代わり土地を管理できるようにしてほしい」。制度の創設を求めた市に対し、国は「憲法の『財産権の保障』に抵触する恐れがある」と慎重だった。
14年1月、国土交通省課長通知により運用の改善が図られ、地権者不明の場合に工事に着手できない事態は避けられた。それでも訴訟リスクは残る。結局、3年近くかけて丁寧に承諾を得た。
陸前高田市では約260億円を投じて全長約3キロのベルトコンベヤーで土砂を運搬した。事業スピードは格段に早まった。それでも広大な面積を海抜10メートル前後まで盛り土する事業は2年遅れ、20年度までかかった。
手続き簡素化や規制緩和を図り、11年に成立した復興特区法について、戸羽太市長(55)は13年に出版した著書で強い失望感をあらわにした。「求めたのは超法規的な考えの下、復興を加速させ、被災者に夢を抱かせる『魔法の杖(つえ)』。しかし、実際の法の効力は、スーパーの5%引きのクーポン券程度だった」
土地区画整理事業は過去の震災や戦災復興でも活用されてきた。地権者が少しずつ土地を提供(減歩)して公共用地を確保し、延焼防止のために道路を拡幅したり公園を整備したりした。売却して事業費に充てる保留地も設けた。
陸前高田市の規模は、仙台市の戦災復興事業区域約291ヘクタールに匹敵する。かさ上げ地では、広がる空き地に真新しい公園が寂しく点在し、保留地も売れ残る。
一度走りだした巨大事業の方針転換がいかに難しいか。市の復興計画検討委員長を務めた東京工大の中井検裕(のりひろ)教授(都市計画)は「スリム化は部分的にしかできなかった。小さくするのも大変で時間がかかり、被災者の意向変化に追い付けなかった」と嘆く。
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