コンクリートの上で跳びはね、スケートボードを素早く1回転させて着地する。住宅のない災害危険区域の中に、スケボーの技を競い合う子どもたちの笑い声が響く。
仙台市若林区荒浜のスケボー練習場「CDP」は、運営する貴田慎二さん(40)の自宅があった場所だ。
四角形の「カーブボックス」、すり鉢状の「ボウル」。コンクリートや木材でできた設備は、住宅の基礎や廃材を再利用した。
貴田さんは宮城野区の榴岡公園近くで東日本大震災の地震に遭った。知人宅に一時避難し、荒浜にたどり着いたのは5日後。津波に流されたがれきをよじ登り、自宅を捜した。「うちだ」。玄関タイルを見つけ、わが家を失ったことを実感した。
毎日自宅跡を訪れ、がれきを片付けた。「スケボーパークになったら面白いかもね」。震災から2カ月後、自宅跡で友人とスケボーをしていた時、練習場造りの話が持ち上がった。津波で友人を亡くした。自分もいつ死ぬか分からない。「熱中したスケボーを悔いなくやろう」。心に決めた。
スコップで整地し、雑草を手でむしる。使える廃材を探し、オープンに向けてこつこつと準備を進めた。
「何もしなければ本当のゴーストタウンになる。人が住めなくても、荒浜で人の流れができたらいい」。2011年12月に市が荒浜を災害危険区域に指定したが、土地は手放さなかった。
曲面での走行などを楽しむ半円筒形状の設備「ランプ」も友人から譲り受け、翌年11月にオープンさせた。正式名称は「CARPE DIEM PARK(カルペ・ディエム・パーク)」。ラテン語で「今、この瞬間を楽しめ」という意味が込められている。
大人500円、高校生以下は無料。練習場の方針は「キッズが楽しむ場所」と至ってシンプル。口コミで広まり、子どもたちがボードを抱えて遊びに来るようになった。多いときは1日30人が訪れる。
スケボーの練習目当てだけではない。津波で自宅を失った同級生たちが墓参りの帰りに子連れで顔を出すこともある。「自宅跡が自分だけの場所ではなくなった」。震災から一番変わったことだと感じている。
15年の夏、パークじゅうにキャンドルを並べ、小さなイベントを始めた。荒浜出身のアーティストが音楽を披露し、地元の農家が焼きとうもろこしを配った。
貴田さんがイメージしたのは荒浜にあった伊勢公園の夏祭り。出店があり、住民が盆踊りを楽しむ。「地元の中高生が初めて恋人を連れてくるような思い出深い祭りだった。昔みたいにできないかなって」。今年は新型コロナウイルス感染拡大で見送ったが、再開したいと思っている。
「キッズがパークで練習して、海にも遊びに行く。今まで通り、そういう場所にしていたい。これからも『現状維持』でいく」
オープンから8年。貴田さんは毎日、練習場で子どもたちを待つ。(横川琴実)
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