母親が目を離した隙に、幼い子どもがいなくなった現場に居合わせたことがある。近くを流れる川に落ちてしまったら、命が危ない。夕暮れが迫り、子どもを捜す家族や近所の人たちには焦りが見えた。
「いたー! 見つかったぞ!」
遠くから叫ぶ声が聞こえた途端、ぴんと張ったワイヤがバチンッと音を立てて切れたような気がした。子どもは母親を見て泣きだし、母親は声もなく子どもを抱きしめた。
今、生きていることは、誰にとっても、決して当たり前の「日常」ではない。サーカスの綱渡りのように、わずかでも進む道が違えば、死はすぐ隣にある。
去年の春、秋田で経営者の自殺防止に取り組む佐藤久男さんに話を聞いた。ちょうど新型コロナウイルスに係る緊急事態宣言が出されている頃。日本では、金融危機が発端となって自殺者が急増した時期が2回あったが、今回のコロナ禍が最大の危機になるのではないかと懸念していた。
佐藤さんは自身も経営者として倒産を経験し、うつ病を患ったことがある。幻覚や幻聴に悩まされながらも、ようやく一歩を踏み出した時、友人の経営者が自殺したことを知った。戦後の日本経済を支えてきた彼らが、なぜ死ななければならないのか。その悲しみと怒りが、NPO法人「蜘蛛(くも)の糸」の設立に駆り立てた。
実は、数年前にも一度、佐藤さんにインタビューしたことがある。生い立ちや倒産後の状況、今の活動を始めるきっかけ…。活動の内容だけではなく、そこに至る原動力を探りたかった。その中に、今でも心に残る言葉がある。
「僕は悲しみのない人間は信用しない。人の上に立って輝く人間も素晴らしいけれど、どん底からはい上がっていく人間の素晴らしさをずっと見ているので。深い悲しみは人間を深く耕し、挫折は人間を優しくする。だから、挫折した心を抱いたまま、前に向かっていくと、必ず違った人生が生まれてきます」
佐藤さんは「人間の存在自体が希望」だという。幼い子どもが見つかった時、その場にいた誰もが心に湧き上がる希望を感じていた。「とどまっても、休んでもいいから、あきらめず」に、一歩ずつ「生」をつなぐ。それが希望になるような1年にしたいと思う。
(フリーライター)
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