化学物質過敏症でも安心して食べられる製品を 無添加の焼き菓子で患者支援 夫婦で発症、多賀城の庄司さん

CSに悩みながらも、パンや焼き菓子の製造に励む良博さん(右)と美穂さん(庄司さん夫妻提供)

 宮城県多賀城市でパンや焼き菓子の工房「コトリコーヒー」を営む庄司良博さん(50)、美穂さん(51)夫妻は、化学物質過敏症(CS)に苦しみながらも同じ境遇の人が安心して食べられる製品作りに励んでいる。もともとカフェを経営していたが、CSの影響で閉店。今は通信販売や委託販売に取り組み、「認知度の低いCS患者を支えたい」と前を向く。(多賀城支局・石川遥一朗)

 最初に異変を覚えたのは良博さんだった。2018年の夏ごろ、以前は気にならなかった来店客の香水や制汗剤の香りに不快感を感じた。頭痛や目まいもした。約1カ月後には美穂さんに同様の症状が現れ、関節痛なども起きた。
 複数の医療機関を回り、19年春にやっとCSと診断された。そのころには2人とも症状が悪化し、倦怠(けんたい)感や手の震え、吐き気にも襲われた。臨時休業する日もあった。
 それでも店は続けたかった。カフェは美穂さんの幼少期からの夢。結婚後は2人の夢となり、良博さんが脱サラをして13年に開業。良博さんがパンやコーヒー、美穂さんがスコーンや焼き菓子を担当した。
 理解を求めようと入り口に「店主は化学物質過敏症です」と張り出した。柔軟剤や香水の人工香料を使用している人の入店を遠慮してほしいと記載した。
 反応は芳しくなかった。認知度の低いCS。張り紙を無視して入店する人も多かった。入店を断ると、ネット上で「現代社会に適さないカフェ」「人のせいにする弱い店主」など誹謗(ひぼう)中傷もあった。
 売り上げは半減した。「いちげんさんはいなくなった」と美穂さん。無香料の洗剤に変える常連客もいたが「誰もが気軽に立ち寄れるカフェとしては厳しかった」と良博さん。売り上げ低迷とCSによる健康上の理由で19年12月に閉店した。
 一方で、会員制交流サイト(SNS)で閉店を知らせると励ましの言葉も多く届いた。閉店前には、同様にCSに悩む人たちが県内外から訪れてくれた。
 CSは日常生活に大きな影響を及ぼす。バスや電車、映画館など閉ざされた空間には行けない。2人は「スーパーでさえ人の少ない時間帯を狙い、決死の覚悟で行く」と語る。
 食事にも影響がある。調理した人からの移り香が気になり、食べ物も喉を通らないときがある。
 夫妻は閉店後、パンやスコーンの発送と委託販売を本格的に始めた。CS患者でも安心して食べられるよう食材は無添加と減農薬を徹底。パン工房には、工房専用の服に着替えて外部の香りは持ち込まない。
 徐々にCS患者からの注文も増えてきた。2人は「人工香料などの化学物質は目に見えず、患者の苦しみは理解されにくい。痛みの分かる自分たちが少しでも支えになりたい」と語る。

[化学物質過敏症]洗剤や芳香剤、建材などに含まれる化学物質に過剰に反応して起こる疾患。頭痛や筋肉痛、疲労感などの症状が現れる。NPO法人化学物質過敏症支援センター(横浜市)によると、全国に100万人超の患者がいるとみられる。発症のメカニズムなど未解明な部分が多く、診察できる医師も少ないという。

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