一力遼の一碁一会 「挑戦手合」 普段味わえない雰囲気

一力遼の一碁一会

 新年明けましておめでとうございます。昨年は碁聖と天元位の獲得、国際戦での準決勝進出など充実した一年でした。今年もさらに飛躍の年になるよう頑張ります。皆さまも良い一年でありますように。

 粘り強さを象徴する丑(うし)年の初回は、タイトル戦の挑戦手合を説明します。タイトルまでの道のりについては以前触れたように、挑戦権を得るとタイトル保持者と5番勝負(または7番勝負)を行い、先に3勝(7番勝負は4勝)した方がタイトル獲得となります。

 挑戦手合は通常、各地のホテルや旅館が会場となりますが、時には城や寺、能舞台で開催されることもあります。対局場は和室が多く、今回の天元戦も最終の第5局以外は和室でした。東京などの会館で実施される予選や本戦と違い、挑戦手合には普段では味わえない雰囲気があります。

 入室から対局開始までの5~10分の時間は、いつもより長く感じます。天元戦では第5局で勝ちを意識した時に手が震えました。それほど張り詰めた空気があるのです。

 現地には対局開始の合図をする立会人、棋譜を記入する記録係、主催新聞社の担当者ら十数人も同行します。立会人や記録係は棋士が務めます。対局者や関係者は前日に現地入りして碁盤や碁石、室温などを確認する「検分」を行います。

 現地イベントとして「前夜祭」と「大盤解説」があります。前者は対局者がファンの前で抱負を述べ、交流を深めます。後者は担当の棋士が大きい碁盤を使ってリアルタイムで行うもので、試合後に対局者が登場することもあります。

 挑戦手合は棋士の誰もが憧れ、催事も楽しみの一つです。ただ、昨年は新型コロナウイルスの流行で規模縮小や中止を余儀なくされました。

 5番勝負は一局が1日で決着しますが、7番勝負は2日間に及びます。1日目に対局を中断する際、次に打つ番の棋士が次の手を用紙に記入し、封をして保管されます。「封じ手」と呼ばれるルールです。

 2日目に立会人が開封し、対局再開となります。1度、封じ手を記入する経験をしたことがありますが、書き込んだ位置が間違っていないか少し不安でした。

 このように、挑戦手合には普段の対局とは異なる特徴が数多くあります。
(囲碁棋士)

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