「原発漂流」第5部 現と幻(2) 虚実/サイクル推進の意義転々

核燃料サイクル協議会で向き合う加藤官房長官(右手前)と三村知事(左手前)=昨年10月21日、首相官邸

 「青森県に多大なご理解とご協力をいただいていることに感謝したい」
 昨年10月、首相官邸で開かれた核燃料サイクル協議会。加藤勝信官房長官が開口一番、三村申吾青森県知事に謝意を伝えた。
 梶山弘志経済産業相に加え、電気事業連合会の池辺和弘会長、青森県六ケ所村で核燃料サイクル施設を運営する日本原燃の増田尚宏社長も同席。官民挙げてサイクル施設群を引き受ける青森への気遣いを見せた。
 県と政府が原子力政策を話し合う協議会は1997年に発足。六ケ所村の再処理工場への使用済み核燃料初搬入に向けた安全協定締結の条件として、県が国に設置を求めた。一つの県と政府で構成する協議機関は異例だ。
 2010年以来、12回目の開催となった今回も従来通り「核燃料サイクル政策の堅持」「青森を高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地にしない」などを確認した。
 協議会があったのは、今後の電源構成比率などを決める第6次エネルギー基本計画の検討が、経産相の諮問機関・総合資源エネルギー調査会の分科会で始まってからわずか約1週間後。原子力の方向性がこれから議論されるという中で、政府は協議会で「サイクル堅持」を早々と表明した。
 経産省資源エネルギー庁の担当者は「分科会では結論ありきでなく議論してもらうが、サイクルが引き続き重要である事実に変わりはない」と説明する。言葉通りなら、サイクルの前提となる原発利用の堅持も既定路線ということになる。
 基本計画は第1次(2003年策定)から第5次(18年策定)まで一貫してサイクル推進を掲げる。東京電力福島第1原発事故後の第4次、第5次計画は以前とニュアンスが異なる。
 事故後初の改定となった第4次では「中長期的な対応の柔軟性を持たせる」とサイクル政策を見直す可能性を含む方針が示され、使用済み燃料を再処理せずに捨てる「直接処分」の調査研究も推進するとした。方針は第5次でも基本的に引き継がれた。
 サイクル推進の意義として原発燃料となるウランの有効利用が筆頭に挙げられていたが、第4次以降は「ウラン」の単語すら消えた。代わりに「高レベル廃棄物の減容化・有害度低減」を前面に打ち出している。
 「以前なら『再処理する』から話が始まったが、今は(たまり続ける)使用済み燃料対策の一環で再処理するという文脈だ。何が何でも(再処理に)突き進むという書き方ではない」。原子力畑を長年歩んだ東電の元最高幹部は、サイクル路線が実質的に軌道修正されたと読み解く。
 資源が循環(サイクル)するのでなく、しがらみが円(サークル)を描くように堂々巡りを続ける国策の姿に、与党内にも懐疑論がくすぶる。
 「青森のためにサイクルを推進せざるを得ない袋小路に入っている」「フィクションを続けるのは無理」
 反サイクル論者で知られる河野太郎行政改革担当相は原発事故後、引くに引けないサイクルの現実を自民党の会合などで容赦なく指摘した。入閣後はこうした発言を封印している。

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