「原発漂流」第5部 現と幻(6完)転嫁/失策のつけ 上乗せ回収

託送料金への上乗せを説明する検針票裏面(手前)。表面(奥)には再生可能エネルギー発電による電気買い取りの消費者負担分が記されている

 東北電力の検針票の裏面下段に「賠償負担金」「廃炉円滑化負担金」の文字が小さく記されている。送配電設備の利用料に当たる託送料金の単価に含まれる、との説明が付く。
 前者は東京電力福島第1原発事故前に本来備えるべきだった賠償金の穴埋め、後者は各原発の廃炉を進めるための財務環境整備が目的だ。賠償も廃炉も送配電と直接関係ないが、いずれも経済産業省令で定める。
 大手電力各社で分担し、東北電関係分は賠償負担金で総額2・4兆円のうち1425億円、廃炉円滑化負担金で総額4700億円のうち615億円を占める。
 電力各社は昨夏、両負担金を踏まえた料金変更を認可された。東北電は今年10月から1キロワット時当たり7銭の値上げを予定するが「新型コロナウイルスの影響などを総合的に勘案し判断する」と実施に含みを残す。
 賠償負担金を託送料金で回収する仕組みは「国民全体で福島を支える」との名目で、政府が2016年12月に閣議決定した「福島復興の加速のための基本指針」に盛り込まれた。廃炉負担金分を含め、是非を実質的に議論する場となった経産省総合資源エネルギー調査会の小委員会では当初、異論が続出した。
 「国会を経ずに省令だけで変えられる託送料金に入れてしまうことが、国民の不信感の基になる」。小委でこう苦言を呈した公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)の大石美奈子代表理事は「当時抱いた思いが、さらに強くなっている」と言う。
 特に疑問視するのが廃炉負担金。「負担金が廃炉促進にどう効果があったかは経産省も検証できていない。そうしたものを託送料金で強制徴収するのは、やはりおかしい」と指摘する。
 託送料金での回収が可能となった17年以降、福島県内を除き廃炉が決まったのは東北電女川原発1号機(宮城県女川町、石巻市)など4社4原発5基。ただ、廃炉費用の分割計上が可能となった13年以降、5社5原発6基の廃炉が16年までに決定している。
 関西電力や日本原子力発電に至っては、計3原発4基の原則40年の運転期間を最長20年延長させる方針を決めた。負担金の導入が廃炉を促している状況とは言い難い。
 一方、賠償負担金は「過去分」を国民に負担させる再度のケースであることに反発が根強い。前回は05年から昨年9月まで託送料金で回収された使用済み核燃料再処理費用の過去分だった。賠償と再処理費用を巡る過去の不足分は国と事業者の甘い見通しが招いた結果だが、失策のつけを国民に回し続けている形だ。
 福岡市の新電力事業者は昨年10月、賠償、廃炉両負担金の託送料金上乗せを九州電力に認めた国の決定は違法だとして、取り消しを求める全国初の訴訟を福岡地裁に起こした。原告側は「他地域でも提訴を検討していると聞く」と明かす。
 東北電は紙の検針票を4月から原則としてペーパーレス化する。ウェブサイトで両負担金の上乗せを簡単に説明しているものの、消費者の目に一層届きにくくなりかねない。
 同社は両負担金について「お客さまからの問い合わせに丁寧に説明し、理解をいただけるよう対応する。ウェブサイトの掲載内容も検討する」と説明する。

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原発漂流

 史上最悪級の原発事故の発生から2021年3月で丸10年。原子力事業や原発政策の何が変わり、何が変わらないのか。教訓は生かされているのか。改めて検証する。

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