「原発漂流」第5部 現と幻(3) 裏腹(上)/資源のごみ化 地元警戒

使用済み燃料の保管場所を視察する原子力規制庁職員ら。規制庁は保管期限の約10年前から搬出状況を確認する方針を示す=2019年7月、むつ市の中間貯蔵施設
2020年3月末時点の使用済み燃料と貯蔵能力

 湧き上がる不信感が、新年恒例の儀礼行事にも影を落とした。

 東京電力が1月13日に予定していたむつ市への年始あいさつが、市の意向で前日に急きょ中止された。表向きの理由は新型コロナウイルス対策だが、額面通りには受け取れない。

 東電など大手電力会社でつくる電気事業連合会(電事連)は昨年12月、市内に立地する使用済み核燃料中間貯蔵施設を電力各社で共同利用する案を表明。市に事前相談はなく、宮下宗一郎市長は「むつ市は核のごみ捨て場ではない」と強い不快感を示した。

 施設は東電が8割、日本原子力発電が2割出資するリサイクル燃料貯蔵(RFS)が建設、運営する。両社の原発から出る使用済み燃料だけを最長50年保管する約束のはずが、共同利用案が降って湧いた。

 年始あいさつで東電は青森担当の最高幹部が小早川智明社長の手紙を持参し、宮下市長とほぼ非公開で会談する算段だった。市は「非公開」に神経をとがらせた。

 「社長の密書を渡され、密談したとなれば『市と東電は裏で手を組んでいる』との印象操作に利用されかねない」。市幹部は「ドタキャン」の、もう一つの理由を明かす。

 国の核燃料サイクル政策上、使用済み燃料は「ごみ」ではない。一度使われた後に再処理でプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜて再利用される点で「資源」として扱われる。

 各地の原発から使用済み燃料を受け入れる青森県六ケ所村の再処理工場は度重なる完成延期で再処理工程に進めず、使用済み燃料の保管プールはほぼ満杯の状態だ。再処理工場に搬出できない電力各社は原発内の燃料プールで燃料同士の間隔を狭めて容量を増やす「リラッキング」や、敷地内で専用の金属容器に入れて空冷する「乾式貯蔵」でしのいでいる。

 それでもこのまま原発の再稼働が進んだ場合、最も早い東電柏崎刈羽原発(新潟県)で約3年、関西電力高浜原発(福井県)は約5年でプールが満杯になる恐れがある。使用済み燃料を搬出できずプール保管の余裕も失えば、原発は稼働できない。

 むつ市の中間貯蔵施設で使用済み燃料の搬出先とされる「再処理工場」は計画上、どこにある施設かも示されていない。幻のような搬出計画と、約束にない共同利用案。地元は行き場を失いかねない使用済み燃料が「資源」から「ごみ」に変わることを警戒する。

 共同利用案の背景にあるのも、厄介物扱いを受ける使用済み燃料だ。関西電力の原発が集中立地する福井県が、原発内にたまり続ける使用済み燃料の県外搬出先を示すよう関電に繰り返し要求。答えに窮した関電の救済策として、電事連が共同利用案を打ち出した側面が大きい。

 福井県の担当者は「福井と青森ばかりにしわ寄せが来ている」とこぼし、宮下市長は「政策のほつれを瞬間接着剤のように無理やりくっつけても駄目だ」と苦り切る。

 その場しのぎを繰り返す核燃料サイクル政策に、最大の理解者たちも愛想を尽かし始めている。

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 史上最悪級の原発事故の発生から2021年3月で丸10年。原子力事業や原発政策の何が変わり、何が変わらないのか。教訓は生かされているのか。改めて検証する。


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