「原発漂流」第5部 現と幻(4) 裏腹(下)/金のなる木 核燃税拡大

核燃料税導入に向けた庁内チームの看板を設置する宮下市長(左)=2019年8月、むつ市役所
地方自治体が核燃料に課す税の名目

 2020年暮れ、むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設を巡り電力各社の共同利用案が浮上すると、宮下宗一郎市長は不快感を示し渋面を浮かべた。約9カ月前、施設に絡み対照的な表情を見せる場面があった。
 「条例案の可決、成立が、市政の輝く歴史になるよう前進を続けていきたい」。20年3月27日、市議会が核燃料税条例案を可決後にあいさつした宮下市長の顔は達成感に満ちていた。
 条例によると、中間貯蔵施設に運び込まれる使用済み燃料に対し、受け入れ時と貯蔵時に課税する。最初の5年間で約94億円の税収を見込む。市税収入が年間約57億円(20年度当初予算)という市財政に及ぼす好影響は極めて大きい。
 再処理で取り出されたプルトニウムがウランと混ぜられ、再利用される使用済み燃料。政府は「資源」に位置付け、原発事業者は「資産」として会計処理する。むつ市をはじめ、一時貯蔵などで使用済み燃料を引き受ける自治体には「金のなる木」だ。

 核燃料税は1976年に福井県が初めて導入し、現在までに原発や核燃料サイクル施設が立地する12道県と5市町に広まった。元々は原子炉挿入分が対象だったが、使用済みへの課税が拡大した。
 19年度の税収は12道県と、むつ市を除く4市町の総額で471億4900万円に上る。自治体別で最高は原発と使用済み燃料再処理工場を抱える青森県の194億1400万円、最低は宮城県の1億8100万円。施設の規模など課税標準は多岐にわたり、燃料の数量や税率の高低によって開きが出ている。
 青森県では09年度に約111億円だった税収が、東京電力福島第1原発事故後の17、18年度に200億円を超えた。事故後に原発や再処理工場は稼働していないものの、県が「安全対策」「他県との均衡」「税収確保」などを理由に税率を上げ、総税収の1割強を占めるに至った。県の担当者は「貴重な財源。一般財源なので使い道の縛りもない」と誇る。

 そこにあるだけで税源となる使用済み燃料の受け入れは、自治体にとって抗しがたい魅力がある。一方で「厄介払い」のために課税する自治体も出てきた。
 世界最大の原発、東京電力柏崎刈羽原発を抱える新潟県柏崎市は20年10月、市域内の1~4号機プールで15年以上保管する使用済み燃料に累進課税をする新たな核燃料税条例を制定した。保管年数を経るほど税率が上がる全国初の仕組み。「むつ市(の中間貯蔵施設)への搬出促進が狙いだ」と市の担当者は説明する。
 行く先々でさまざまな税収を生み出す使用済み燃料は「打ち出の小づち」の半面、握り締めて離さなければ保管や貯蔵が「処分」に意味を変えかねない。核燃料サイクルが行き詰まる中、その差は紙一重だ。
 原子力財政に詳しい清水修二福島大名誉教授(財政学)は「核燃料税には切りがなく、依存度が深まれば自治力はかえって弱まる。財政の余裕があるうちに『核燃料頼み』から脱却すべきだ」と訴える。

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