社説(2/11):女性蔑視発言の混乱/政府の統治力欠如も深刻だ

 不適任だと批判を強める国内世論に加え、国際オリンピック委員会(IOC)から「完全に不適切だ」と指弾されてもなお、続投するのだろうか。

 女性を蔑視する発言をした東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)に辞任を求める声が、日増しに高まっている。

 森氏は日本オリンピック委員会(JOC)会合で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言した。これに対し「女性は発言するなということか」などと反発が相次いでいる。

 問題は個人の資質と進退にとどまらなくなっている。

 新型コロナウイルスの感染収束が見通せず、東京五輪の開催に懐疑的な見方が支配的になっているさなかだ。

 発言が国内外に波紋を広げる中、政府、与党は迷走を続け、日本政府の統治能力の欠如を露呈した。

 五輪を開催する能力が日本にあるのだろうかと、不信の矛先は政府にも向き始めている。開催への不安とともに、疑念が深まっている。

 混乱の責任は、ひとえに不適切な発言をした本人にある。謝罪会見で見せた開き直った姿勢は、反省の弁の裏にある本心をさらけ出した。

 森氏の辞任は不可避だ。しかし、会長の交代で幕引きとしてはならない。

 東京大会が掲げる「多様性と調和」の実現に向けた継続的な取り組み。スポーツ界の男女平等推進への確固たる決意。政府と組織委は不信感を拭うため、明快なメッセージを速やかに発し、具体的な施策を打ち出すことが必要だ。

 男女共同参画担当相を兼ねる橋本聖子五輪相が旗振り役を担うべきだが、職責を真正面から受け止めているとは言い難い。

 橋本氏は「日本は男女共同参画の取り組みを一生懸命推進してきた。たった一言で、世界から日本は何も変わっていなかったと思われるのは大変残念だ」と語ったが、担当相としての気概が感じられない。

 リーダーシップを発揮すべき菅義偉首相は「女性蔑視発言は国益に沿わない」と述べながら、「人事は組織委で決めるべきだ」と距離を置き、混乱の収拾に積極的に動こうとしていない。

 組織委が7年前に設立された際、政府主導で森氏に就任を要請した経緯があり、森氏の続投で収束を図りたいのだろう。

 日本の見識と信頼が問われている局面に際し、首相の傍観者的な姿勢は、世論との隔たりを広げるばかりだ。

 蔑視発言を機に大会ボランティアの辞退が相次ぎ、五輪スポンサー企業から厳しい批判や苦言が噴出している。

 組織委はあす、理事と評議員を集めた臨時の会合を開き、対応を協議する。事態の打開へ待ったなしだ。早急に突破口を切り開くべきだ。

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