社説(2/22):福島移住に200万円/最後の避難者まで支援を

 政府は東京電力福島第1原発事故で被災した福島県内12市町村への移住・定住促進事業に充てるとして、国会で審議中の新年度予算案に福島再生加速化交付金50億円を確保した。
 移住者に最大200万円を支給する支援金制度が柱。避難住民の帰還が進んでいないことが背景にあるが、国策の原発が起こした過酷事故によって図らずも古里を離れた避難者の支援に、政府はこれまでと同等の取り組みを継続するべきだ。
 12市町村のうち広野町、田村市都路町地区、楢葉町、川内村、南相馬市小高区、川俣町山木屋地区は全域で避難指示が既に解除された。今なお富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村には帰還困難区域が残る。
 政府は福島再生加速化交付金から県に対し8億円、12市町村にはそれぞれ最大4億円を交付する方針。事業は複数の年度にまたがって継続させる予定で、初年度の21年度中に300人の移住を目指すという。
 県の支援金スキームでは5年以上定住の意思を示し、就業または起業する人に家族帯同で200万円、単身は120万円を配る。職場も12市町村内に限るかどうかは内部で調整中だ。
 併せて移住5年以内に起業する際の経費の4分の3(最大400万円)を補助する制度も設ける考え。県は12日開会した県議会2月定例会に関連事業費18億8000万円を盛り込んだ新年度当初予算案を提出した。
 未曽有の炉心溶融(メルトダウン)事故から10年。県内外の避難先で新たな生活基盤を確立するなどし、帰還を望む避難者数は頭打ちとなっているのが現状だ。
 復興庁のまとめでは、12市町村で避難指示が解除された区域の居住人口は昨年4月時点で計1万4000。住民基本台帳に登録された人口の2割にとどまった。
 避難の年月が長期化する帰還困難区域はなおさらだ。復興庁や県が実施した前年度の住民意向調査では、「戻りたい」との回答が双葉町と浪江町11%、大熊町10%、富岡町8%にとどまり、いずれも19年の前回調査と比べ、微減か横ばいだった。
 これらの数字は確かに、住民帰還を前提としてきた従来の復興の施策体系が、限界に近づいていることを裏付けるのかもしれない。
 支援金という動機付けで被災地へ移住者を呼び込み、復興を後押ししてもらおうという狙いは理解できる。しかし、新たな施策が「帰還がこれ以上見込めないなら、移住を図った方が効果的」といった安易な発想に基づくことがあってはならない。
 避難者らは何も好きこのんで避難したのではない。政府は10年の節目に、改めて最後の一人まで支援を続けると約束するべきだ。

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