社説(2/18):森氏辞任とジェンダー/社会全体で問題意識 共有を

 東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗氏(83)が、「女性蔑視」発言で辞意を表明し、大会まで半年を切った中でのトップ交代は、五輪開催準備へ大きなマイナスとなった。

 それ以上に深刻なのは、日本の「男女不平等」の根深さを世界に露呈したことだ。組織委だけでなく、日本社会全体が性差別の問題を真剣に考える機会としたい。

 スポーツ庁は2019年、スポーツ団体の適切な運営のための指針として「ガバナンスコード」を発表し、この中で女性理事40%、外部理事25%を目標として明記した。

 日本オリンピック委員会(JOC)は目標達成を目指すが、森氏の3日の発言は、達成の難しさを強調する流れから出た。12日、組織委の理事、評議員による会合で辞意を表明した際、森氏は「解釈の違い」と釈明し、報道を批判した。

 五輪憲章は「人種、肌の色、性別、性的指向などの理由による、いかなる種類の差別も受けない」ことを明記。東京大会も、基本コンセプトの一つに「多様性と調和」を掲げる。どう解釈しても、発言が容認される理由はなく、辞任は当然だった。

 日本スポーツとジェンダー学会会長の来田享子中京大教授は「森氏が辞めて、終わりという話ではない。組織として、これまでの取り組みで何が足りなかったか、今後どうするかが見えないのが問題だ」と指摘する。

 組織委の武藤敏郎事務総長によると、12日の会合では、ジェンダー平等が議題となり、出席者から「具体的な形として見える化することが大事だ」などの意見が出たという。その上で、プロジェクトチームの設置や、女性の役員比率を高める取り組みを早急に実施する方針を示した。

 会長候補の要件としても挙げられ、組織委の対応が注目されるのはもちろんだが、問題はそれだけではない。

 昨年、世界経済フォーラムが発表した各国の男女の不平等を示すジェンダーギャップ指数では、日本が153カ国中、121位。森氏発言に対して、政財界には影響を過小にとらえたり、「日本社会の本音」と漏らしたりする反応もあった。

 来田氏は「差別を受けている側に立ち、声を上げられる状況になっていなかった」と現状を指摘する。

 発言をきっかけに、国内外から、日本社会が長年克服できない男女格差の後進性が問題視された。国会で取り上げられ、与党内でも動きが出るなど、変化は出始めている。

 トップが交代する東京大会では、「多様性と調和」への取り組みを、具体的に世界に発信できるかが問われる。それ以上に、日本の社会全体が今回の騒動で何を学び、どう差別に立ち向かっていくか。一人一人の意識が、国が変わっていかなければならない。

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