東日本大震災の被災地では、多くの経済人がなりわいの再生に取り組んできた。深刻な打撃を受けた地域のため、大切な人を守るため…。ビジネスを通して復興に貢献する仕事人にスポットを当てる。
食料品の供給というライフラインを守り抜く-。岩手、宮城両県でスーパー18店舗を展開するマイヤ(岩手県大船渡市)の会長米谷春夫さん(73)=岩手県陸前高田市=は、強い使命感を原動力に再起を図った。
「天災に遭っても戸板1枚で営業を続けるとずっと言ってきた。あの時も全従業員が奔走してくれた」
当時あった16店舗中、地元の大船渡、陸前高田を中心に6店舗が津波被害を受け、約17億円の損害を被った。買い物客は訓練通りに避難誘導し無事だったが、休みだった従業員16人が犠牲となった。
大船渡で唯一残った大船渡インター店は、あの日の夕方には営業を再開した。余震が続く中、店舗の前に商品を並べ、値段の端数を切り捨てて販売を続けた。
当時社長だった米谷さんは東京出張中。本社も被災して指示が出せなかったものの、店はすぐ行動した。「非常時こそ企業文化がはっきりする。『お客さま第一』の指針に基づき、現場が判断した」と力説する。
創業は1961年。前の年にチリ地震津波が襲来した。死者・行方不明者が国内最大の53人に上った大船渡に3階建ての本社ビルは築かれた。
「つち音高く、ビルが建てられ、打ちひしがれていた市民は勇気をもらった」。古参の従業員から聞いた言葉を、2代目の米谷さんは深く胸に刻んできた。
半世紀後、再び大津波に襲われた。「スーパーは市民生活に必要不可欠。わが社は率先して明日に向けて動きださないといけない」。自宅が流失し、母ヤス子さん=不明当時(86)=とも連絡が取れない。それでも店舗再建に走りだした。
全店舗が全壊した陸前高田では法の壁に直面した。農業振興地域や津波浸水域に商業施設は建てられない。「被害が大きい陸前高田は建てる場所がない。非常時なのに」。平時と同じ運用にもどかしさを覚えつつ、2011年8月に浸水域の外れにプレハブ店舗を構えた。
「感無量だった。ついつい泣いてしまったね」。古里で商品を再び供給できた喜びはひとしおだった。震災直後、約350人の従業員は解雇せざるを得なかったが、出店を重ねて希望者全員を再雇用できた。
経営の再構築にも踏み切った。家電や衣料品の取り扱いをやめ、食料品の販売を中心に据えた。厳しい小売業界で生き残るため、むつ、天童、相馬各市に本社を置くスーパーと14年10月に経営統合し、合従連衡で地域密着を図る。
念頭にあるのは「誰のために仕事をするのか」。お客さま第一の意識が会社全体に浸透していたからこそ、従業員一人一人が震災時も役割をしっかり果たせたという自負がある。
「トップの器以上に企業は大きくならない」と18年6月、社長のいすを後進に譲った。翌年11月には大船渡商工会議所の会頭に就任し、地域経済の再生に向けた提言を重ねる。
現場への情熱は変わらず、毎月欠かさず全店舗を訪れる。陳列棚をくまなく確認する視線の先に、地域の人々の暮らしがある。
(田柳暁)
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