社説(2/12):森会長辞任へ/世論に鈍く遅すぎた決断だ

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が女性蔑視発言の責任を取り、辞任する意向を固めた。遅きに失した幕引きだ。

 東京五輪は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で史上初めて延期となり、開幕まで残り半年を切った。感染を抑え込めるか不透明な中、今夏の開催可否を最終判断するタイムリミットが迫っている。

 組織委トップの失態が及ぼした影響は計り知れない。開催に懐疑的な見方が広がっており、五輪への国民の期待がさらにしぼみかねない。

 後任は日本サッカー協会元会長の川淵三郎氏(84)が就くとみられる。政府と組織委、開催地東京は国内外の信頼を取り戻すため、一丸となって体制の再構築を急がなければならない。

 森氏は3日の日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言。翌4日に「五輪・パラの精神に反する不適切な表現だった。深く反省している」と謝罪した。

 発言を撤回したものの辞任を否定し、記者会見での態度がさらに火に油を注いだ。

 国際オリンピック委員会(IOC)は当初「この問題は決着したと考えている」と不問に付した。しかし、収束に向かわず、選手や五輪スポンサー企業から批判や苦言が相次ぎ、大会ボランティアの辞退も続出している。

 IOCが一転、森氏の発言は「完全に不適切だ」と指摘する声明を出したのは、世論の風向きを読んだからだ。

 組織委と政府は事態の収拾に動かず、責任回避に終始した。国内外から厳しい批判と不信の目が向けられているにもかかわらずだ。

 組織委は政府と別組織だとして、政府は森氏の進退について言及を避けてきた。

 菅義偉首相は森氏の発言を「あってはならない」と評したものの、「組織委は公益財団法人だから、首相として(森氏の進退を)主張することはできない」と語った。

 JOCの山下泰裕会長は「会長職を最後まで全うしていただきたい」と述べた。政府とJOCトップの発言は、女性蔑視を黙認し、森氏を擁護していると受け止められてもやむを得まい。

 森氏はスポーツ界に強い影響力を持ち、政財界との強固な人脈を生かして五輪の開催準備をけん引してきた。功績は大きいとはいえ、差別の解消に向けて取り組んできた人たちの努力をないがしろにした責任は免れまい。

 図らずも日本は男女平等の社会づくりが遅れていることを印象付けた。森氏個人の問題にとどめてはならないし、人事の刷新で済まされまい。

 国際社会の信任を得るためには、日本社会に根強く残る旧態依然の体質を直視し、改める行動を起こすことが急務だ。

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