被災地の野球団 東北楽天の10年(上)子どもの笑顔

相馬こどもドームで練習する球児たち=2020年12月23日

 東日本大震災の発生から間もなく10年を迎える。プロ野球東北楽天は、東北を拠点とする球団として使命感を持ち、被災地を「スポーツの力」で勇気づけてきた。球団は復興支援にこれまでどのように関わり、今後どう向き合っていくのか。
(スポーツ部・佐藤理史)

 テニスコート5面分ほどの広さの人工芝を、11人の野球少年が元気に駆け回る。明るい声と笑顔を、かまぼこ形の屋根が包み込む。

 昨年12月下旬、福島県相馬市の屋内スポーツ施設「相馬こどもドーム」で、地元の学童チーム「飯豊ゴールデンジャガーズ」が午後7時から夜間練習に励んでいた。

 ドームでの練習は冬期間や梅雨時の月2回。普段は週4日、小学校の校庭などで行う。「風がないから寒くない」「転んでも痛くないし、泥だらけにならない」「ドームのおかげでうまくなった」。児童はドームでの練習を心待ちにする。

 施設は東北楽天が2014年12月に建設し、市に寄贈した。チームカラーのクリムゾンレッドを基調とし、正面にイーグルスのロゴが入る。少年野球に限らず、年間約1万人の市民が利用する。ジャガーズ保護者会長の猪戸清二さん(36)は「ドームができて、イーグルスに親しみを感じるようになった人は多いだろう」と語る。

 「スポーツの力で子どもたちを笑顔にしたい」。11年の震災を経て、球団は被災地に運動施設を贈る「TOHOKU SMILE PROJECT(東北スマイルプロジェクト)」を始めた。背景にあったのは、震災後に指摘された子どもの運動不足。球団の高い知名度や培った営業力を生かし、共鳴するファンや企業から3億円超の寄付金を集めた。第1弾となる相馬こどもドームの建設費約2億円は、その中から支出した。

 17年に「大槌こどもグリーンフィールド」(岩手県大槌町)、昨年は「閖上こどもアスレチックパーク」(宮城県名取市)を寄贈した。

 小規模な野球場「こどもスタジアム」も宮城県南三陸町など3カ所に整備し、今年は同県石巻、岩手県宮古市など4カ所での完成を見込む。

 球団の松野秀三地域連携部長(43)は「球団は旗を振ることはできたが、賛同してくれた方々がいなければ、なし得なかった」と感謝する。

 この10年間はハード面の整備、寄付金や物資の直接的支援が中心だった。今後はソフト面の支援へと軸足を移す。野球観戦に訪れた人が周辺の観光地に足を延ばす「スポーツツーリズム」、被災地が以前から持っていた魅力を発信するシティープロモーションなどの分野で協力する考えだ。

 「球団が歩み寄るイメージの『地域密着』より、思いを同じくして共に前へ進む『地域連携』を大事にしたい」と松野部長。復興支援を通じて生まれた東北各地との関係を深めていく。

[東北楽天の主な被災地支援]「がんばろう東北」を合言葉にしたグッズ収益や募金は計約6900万円となり、岩手、宮城、福島3県へ寄付した。選手らは2011~13年に計70回、避難所や仮設住宅への訪問を重ねた。被災地の子どもたちを球場へ招待する事業は19年までに計60回実施し、計8848人が来場した。

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