赤1500本、白800本分のワインが熟成たるの中で出荷の日を待つ。
念願の秋保産ブドウを使ったワインの販売が年内に始まる。栽培を始めて7年目。昨秋、質、量とも納得のいく収穫となった。
「ことしはいいブドウができたね、と言えるようになった」。毛利親房(ちかふさ)さん(52)が満足げに話す。
仙台市太白区秋保の温泉街に2015年、仙台秋保醸造所を開設した。2ヘクタールで12品種7000本のブドウを育てる。秋保を代表する観光拠点となり、20年の来場者は5万6000人に達した。国の観光支援策「Go To トラベル」も追い風となった。
前職は設計会社のサラリーマンだ。仕事で何度も訪れた宮城県女川町は東日本大震災後、見る影もなくなっていた。何が復興に役立つのか。風評被害に悩む生産者の声を聞き、ワインツーリズムに着目した。
観光客がワイナリーを巡り、生産者と語らいながら酒と料理を楽しむ。「ワインは飲食、観光など多様な産業をつなぎ、復興に貢献できる」と確信した。
県内の自治体に復興事業として提案したが反応は鈍い。「ならば自分で」と週末を利用してブドウ作りを始めたが、挫折の連続だった。
妻(52)に愚痴ると、「納得するまでやりなさい」と脱サラへ背中を押してくれた。当時は長女(14)も幼く、妻は次女(6)を妊娠中。「それでも『何とかなる』と言う。私より肝が据わっていた」
秋保に住む友人の紹介で借りた耕作放棄地は気候、地形、土壌ともブドウ栽培に申し分ない。地元観光業界も事業を歓迎してくれた。開設資金1億5000万円は、三菱商事復興支援財団からの5000万円の出資と、地元金融機関などからの融資で賄った。
東北を舞台にした広域型ワインツーリズムも提案して回った。賛同する飲食店や生産者、行政、観光業の輪は6県に広がり、19年から各地でツアーが始まった。
ワインを使った新しい食の提案、商品開発にも意欲的だ。地元秋保の工芸作家と開発したワイン用デキャンタ(容器)、仙台箪笥(たんす)の技術を生かしたワイン立てのほか、県産食材とワインを組み合わせたベーコンや煮込み料理も紹介する。
青臭さがあったワインの質も、専門家の指導で劇的に向上。18年に国内のコンクールで初めて入賞した。「おいしくなった」。妻の言葉が一番うれしかった。
昨年4月、くも膜下出血で倒れた。休みなく働き続けたストレスが原因だ。「後遺症なく退院できたのは本当に幸運だった。生かされた命で恩返しをしたい」と思いを新たにする。
新型コロナウイルスの収束は見通せない。温泉街を回遊する客足が途絶え、イベントは中止が相次ぐ。21年度に事業を軌道に乗せる計画に、暗雲が立ち込める。「しっかり準備をすれば回復は早い」。ことし採用した営業社員1人を含め従業員は10人。人気の飲食店への売り込みを強化するなど攻めの姿勢を貫く。
実は下戸。ワインはテイスティング程度だが、酒席は大好き。ワインとおいしい料理を囲んだ語らい、そこでの笑顔が原動力だ。
(佐藤素子)
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