東日本大震災の最大被災地に1号店を構え、この10月で丸10年。従業員の理想の働き方を追い求めてきた。
「オープン後はとにかく必死だったよね」。1月下旬、宮城県石巻市内の美容室「ラポールヘア石巻大街道店」。はさみを動かす女性スタッフに運営会社社長の早瀬渉さん(44)=仙台市太白区=が笑顔で声を掛けた。
被災地の女性美容師は暮らしの土台を壊され、苦境に置かれていた。生活再建を後押ししながら業界の課題も解決したい-。2011年4月、美容大手の役員を辞して宮城県に入り、現在の会社を設立した。
10月の1号店開店日。待ち望む多くの女性が行列を作った。「無事だったんだね」「まさかここで会えるなんて」。店内は互いを気遣う会話と笑顔であふれた。
その年は年末まで客足が途切れず、カットの順番待ちが2、3時間もざら。12年3月に市内に2号店を開いた。「地域に受け入れられたと思い、ほっとした。雇用を守れるという自信が深まった」と振り返る。
岐阜県養老町生まれ。名古屋市のIT専門学校時代、企業などでの活躍を夢見る同級生との交流の中で、その志の行方を左右する「経営」に興味を抱いた。20代で美容サロンを創業し、名古屋を拠点に全国展開した。手腕を買われて08年に美容大手モッズ・ヘアジャパンに移り、役員を務めた。
いかに効率的に利益を上げ、ブランド価値を高めるか。経営に心血を注ぐ中、震災で違和感を覚え始めた。
日々増え続ける犠牲者の数。被災地にある傘下店舗の関係者の安否確認すらままならない。会社を大きくするだけの考えがちっぽけに思えた。実業家の渋沢栄一や楽天創業者の三木谷浩史氏が関東、阪神という過去の大震災とどう向き合ったのかを調べ、資料を徹底的に読み込んだ。
やがて今の経営理念にたどり着く。雇用を生み、従業員を教育して稼いだ利益から納税する-。「企業は人々の困り事を解決するためのものだ」と。
美容室は現在、青森、宮城など9都府県に直営とフランチャイズの計24店を展開する。経営上、最も重視する従業員数は開業当初の8人から約170人となり、ほぼ全員が女性だ。
柔軟に働けるよう、美容師にはパートと業務委託の二つから勤務形態を選んでもらっている。保育士を雇い、従業員や客が利用できる託児室を店内に設けた。
女性が望む働き方を実現するノウハウを築き上げ、美容室のフランチャイズ加盟を求めて異業種の会社からの申し出も増えているという。
女性美容師は結婚や出産を機に離職することが多い。慢性的な人材難は相変わらずだ。免許を持ちながら思い通りに働けない悔しさを知ったことが、事業拡大の原動力になっている。
雇用の場を増やすため、今後は年10店の拡大を視野に入れる。「ママさんからシニアまで美容師の働き方はそれぞれ。みんなの思いをかなえたい」
被災地発の取り組みが、業界全体を変える起爆剤になると信じている。
(樋渡慎弥)
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