<とびらを開く>震災孤児・遺児への支援 居場所づくり継続を

学習能力開発財団(R)が仙台市内の小学校で親子向けに開いた自己肯定感セミナー=2020年9月
マンツーマンで生徒に対応する学習能力開発財団(R)の学習ボランティア(左)
オンラインで子どもに学習指導する学習能力開発財団(R)の講師

 東日本大震災で親を失った孤児・遺児らの学習支援を仙台市で続けている「一般財団法人学習能力開発財団(R)」理事長の畠山明さんに話を伺いました。

 「日常の当たり前が貴重なんだということを教えてもらっている。このことを特にお母さん向けに伝えていきたい」と力を込める畠山さん。一対一の学習支援事業を行う塾を25年前に始めました。また2011年6月、不登校や発達障害のある子ども向けのサービスに特化した「一般財団法人学習能力開発財団(R)」を創設しました。

 そして、震災で一度に両親を亡くした子どもの学習支援を無料ですることになりました。「初めは戸惑った。自分に引き寄せて考えたら、あまりにもショックが大きかった」と当時を振り返ります。

 取り組んでいる事業には、幼稚園から大学までの児童・生徒・学生、保護者、教師ら、対象に合わせたセミナー(無料)があり、学習や進路などのサポートをしています。不登校が多い宮城県の事情に合わせ、自己肯定感に関する話をすると、参加者は聞き入るそうです。

 学習支援をしている20代の女性は「自分自身の両親は健在で、日常生活のありがたさを再認識させてもらっている」と話し、教える側の学びも多いそうで、子どもたちの考え方や気持ちを尊重しています。「ありのままを受け入れることは、子どもたちの自己肯定感につながる」と言います。

 「心のケアについては、発災直後だけではなく、時間がかなり経過してからケアが必要になることもあり、一律期限をきって行うものではない」。これは、2019年3月、「東日本大震災における震災孤児等への支援に関する調査報告書」として三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(大阪市)が発行した中に記されている一文です。

 この調査研究は、震災孤児が希望に沿った進路選択や自立に対して、適切な時期に必要なサポートを行うという観点から、震災孤児や自立前の青年に対する支援について把握・検証し、今後の支援に参考となる提言を行うのが目的です。

 震災孤児本人とその療育者に対するアンケートや、自治体に対するアンケート、支援団体などへのヒアリング調査を実施。それを通して孤児の現状や、発災後から現在に至るまでの支援などの状況を把握する一方、有識者による検討委員会から助言も受けています。

 「調査結果のまとめ」には、考察と10の提言に整理され、前述の心のケアに関する項目もその一つです。そのほか、「専門職による未成年後見人の普及」として、親権者がいなくなるため、孤児に代わってさまざまな手続きや財産管理など行う必要があり、早い段階で孤児に対しては、専門職の未成年後見人を選定することが重要であると提言しています。

 また、「発災直後から、ほっとできる場・居心地のよい場の創出」、「経験の共有や相談できる仲間づくり・居場所づくりの支援の充実」とあり、これらは、どんな対象者にとっても、さらには普段からあってもよい環境と言えるのではないでしょうか。

 支援現場や調査報告書を通して、震災孤児・遺児の支援はまだまだ継続していく必要があると認識を改めました。

 今月13日深夜、宮城、福島両県で震度6強を記録した地震が発生しました。テレビに写し出される各地の震度に身構える一方で、「津波の心配はありません」というアナウンスに安堵(あんど)。しかしその後、東日本大震災の余震と知らされ、言葉を失いました。

 朝刊には今もなお「東日本大震災死者数(行方不明者数)」が記されています。その家族や親戚、知人・友人ら、多くの方が思いを巡らせたのではないでしょうか。

 平時から災害時に備える準備は、震災孤児らの支援をヒントに他の支援活動にも当てはまる視点がありそうです。震災10年を、考え直す機会に捉えたいです。
(NPO法人せんだい・みやぎNPOセンター 青木ユカリ)

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