東京電力福島第1原発の敷地まで100メートル。周囲に県内各地から運ばれてきた除染土の袋がうずたかく積み上がり、押し寄せてくるかのようだ。
東京都内に住む門馬好春(63)の福島県大熊町の実家は、除染土を一時保管する中間貯蔵施設の敷地内にある。訪れる際には許可をもらい、防護服を着る。ガラスは割れ、イノシシの排せつ物の跡が残る。
「原発事故は古里を根こそぎ奪っていった」
神奈川県内の職場で東日本大震災に遭った。原発事故が起き、古里に避難指示が出された。親類、知人らの安否を確認できたのは数日後。無人となった生家が中間貯蔵施設の候補地に入ったことは新聞で知った。
2013年6月、国が福島県楢葉町で初めて開いた説明会に参加した。同町が候補地から外れ、14年5~6月には県内外で計16回の説明会が開かれる。
「30年以内に県外で最終処分する」と言いながら、敷地の全面国有化を目指す国の姿勢は「国の都合の押し付け。不信感しかなかった」。最終処分地化への懸念が高まる中、当時の環境相石原伸晃が「最後は金目でしょ」と発言する。
地元の反発は強まった。国は同年7月に用地の全面買収を断念。用地取得は売買契約だけでなく、借地契約を加え、それに伴い最長30年間の地上権設定が含まれることになった。
その後の動きは予想を超えて早かった。9月に県が建設の受け入れを国に伝達。12月には大熊町、15年1月には福島県双葉町が相次いで容認した。「全体の条件が整っていない」。有志で準備していた地権者会を前倒しで発足させた。
環境省と地権者会の交渉は同年1月に始まり、昨年12月まで計46回を数える。地上権の契約書には「国が期間を繰り返し延長できる」と解釈できる条文があった。30年後の確実な土地返還を担保するため、約30カ所を改めさせた。
地上権を設定して用地を提供する地権者への補償が不適正だとも主張する。不動産鑑定に基づいた補償額を一括払いする現行方法は、国の損失補償基準要綱に反しているとして、要綱に沿った地代の適用を求め続けている。
中間貯蔵施設は必要だと思っている。それでも「こうしたやり方は、原発事故で被災、避難し、その上で先祖伝来の土地を貸したり売ったりしようとしている人たちの思いを踏みにじっている」と強く思う。
コメと葉タバコを作る農家に育った。幼い頃は貧しかったが、山、川、海に囲まれた古里には人の触れ合いがあった。「定年になったら大熊に戻ろうと考えていた」が、慣れ親しんだ風景は変わった。
環境省によると、20年12月末現在で全体面積1600ヘクタールのうち、地上権設定206ヘクタールを含む1205ヘクタールで契約が完了した。21年度には、帰還困難区域以外から出た除染土の搬入がおおむね終わる見通しだ。
最初の除染土搬入から間もなく6年がたつ。残り24年。県外の最終処分地探しは手つかずの状態だ。「国が約束を果たすかどうか。行く末をしっかりと見ていくつもりだ」
(敬称略)
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から2021年3月で10年。巨大津波で甚大な被害を受けた3県の中で、第1原発が立地する福島は復興の遅れが目立ち、住民は今なお風評との闘いを強いられている。被災者や当事者の記憶から複合被災地・福島の10年の足跡を振り返り、あるべき復興の姿を展望する。
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