一力遼の一碁一会 「何手先まで読む」  50手以上考える局面も

一力遼の一碁一会

 プロ棋士についてさまざまな質問を受けますが、その中で特に多いのが「何手先まで読めるの?」です。今回はその疑問にお答えします。

 テレビ棋戦では、その対局をリアルタイムで解説する棋士がいます。各局面の状況説明に加え、今後の進行を予想するのが仕事です。囲碁を知らない人から「数十手先まで予想して、そこから現局面まで石を戻せるのがすごい」とよく言われますが、棋士にとってはそれほど難しいことではありません。

 対局の際、ただ単に石を置いているのではなく、それぞれの手に意味を持たせて打っています。そのため「ここまでの流れを考えると、次はここに打つだろう」という戦略がある程度見えてくるのです。

 音楽家が曲を聴いてすぐにその音を再現したり、即興でアドリブを加えたりすることができるのは、コード進行などから瞬時に曲の流れが分かるからでしょう。囲碁の場合はなじみがないため難しく思えるかもしれませんが、上達すれば進み具合を予想できるようになります。

 とはいえ、対局中は次の手さえ何が正しいか分からない状態に陥ることがあります。形勢の判断が難しい場合は、一手に1時間以上を費やすことも少なくありません。相手が途中で変化を見せ、自分が予想した通りにはなかなか進まないからです。そこで、頭の中で想定図を描き直しますが相手もどこかで反発します。

 読みの力と併せて求められるのが判断力です。実戦では、複数の想定図を比較した上で次に打つ手を決定します。ただし、先の進行をいくつか思い浮かべても、自分勝手な想定図ばかりでは意味がありません。相手にとって最も良い手も読み、双方最善の展開を考える必要があります。

 数通りの展開をそれぞれ数手、十数手先まで読んでいるので、全て合わせると一つの局面につき50手以上考えている計算になります。対局はこの繰り返しで進みます。

 従って、冒頭の質問の答えは「局面によっては50手以上読むことがある」です。棋士は枝分かれする複数の変化を想定し、それぞれをイメージして比較しながら対局しているのです。
(囲碁棋士)

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