宮城県塩釜市の塩釜一小5年高橋心陽(こはる)さん(11)は、生まれた時から髪を伸ばし続けている。東日本大震災で亡くなった父昌照さん=当時(37)=が触れたぬくもりを残したいからだ。震災当時は1歳。父の記憶はほとんどない。それでも「父はヒーロー。覚えていたかった」と、10年たった今も面影を追い求めている。
震災当時、心陽さんは仙台市宮城野区岡田新浜で2歳上の兄と両親の4人で暮らしていた。人工芝の施工会社を営んでいた昌照さんは、消防団員として沿岸部で避難誘導中に津波に襲われた。
その日、昌照さんが着ていたのは家族の名前を組み合わせた「真心陽香」の刺しゅうが入った作業服だった。母の陽香さん(47)は「夫は子どもとの入浴や料理が好きで、本当に子煩悩だった」と振り返る。芯の通った人になるようにと、2人の子どもの名前に「心」を入れたのも昌照さんの提案だった。
陽香さんは震災から数年がたち、心陽さんの髪が腰近くまで伸びても切れずにいた。「夫が触ったぬくもりが残っているかもしれない」。自宅が被災し、思い出の品はない。昌照さんの生きた証しを取っておきたかった。
幼い頃は「プリンセスみたい」と気に入っていた心陽さん。成長につれて、陽香さんの思いを理解するようになった。「母は髪を切ってもいいと任せてくれるけど、『じゃあ切るよ』と言うと、『もったいないよ』となる。本当は切ってほしくないんだなと思う」と気持ちを酌む。
先月測った髪の長さは135センチ。身長156センチの心陽さんの膝まで達した。シャンプーは3回に分け、昌照さんが触れたはずの毛先は入念にトリートメントする。入浴は1時間かかるが、自分で三つ編みにするのは5分もかからない。
小学校は1学年1学級で、5年間顔触れが変わらない。「入学した頃から髪が長いから、同級生は特別だと思ってないみたい」と、心陽さんは周りの理解に感謝する。中学校は髪の長さや結び方の校則があるが、「まず先生と話してみて切るか決めたい」と話す。
心陽さんの夢に出てくる昌照さんは、趣味の海釣りをしている。「ずっと黙っている。何か言ってほしいんだけどね」。家庭でよく昌照さんのことが話題に上がる。「大ざっぱなところがよく似ている」と言われ、戸惑う。「どう反応すればいいのか分からない。どんな人か覚えていたかった」と、悔しそうな表情を見せた。
先週、英語の授業で「マイヒーロー」を問う課題が出された。迷わず、父と答えた。「だって私の命を助けてくれたから。こっち来るなって」。記憶はなくても、そう感じている心陽さん。将来は人の命を救う仕事を目指している。
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