震災関連死 宮城・石巻の死因、27%が肺炎 9割が高齢者、劣悪な避難生活影響

グラフ1
グラフ2
グラフ3

 東日本大震災の最大被災地・宮城県石巻市で関連死に認定された275人の死因を分析した結果、最多が肺炎で3割弱を占めることが12日、河北新報社と帝京大大学院の調査で分かった。65歳以上の高齢者は約9割に上り、津波でぬれた人が2割以上いた。津波被災地の関連死の死因や津波の影響を分析した調査は全国で初めて。(震災関連死取材班)

 河北新報社は昨年8月、市に関連死調書を開示請求し、請求後に認定された1人を除く275人の死亡診断書や審査の議事録を入手。主な死因や年齢、死に至った最大要因などを帝京大大学院の協力を得て分析した。
 死因はグラフ1の上の通り。肺炎(26・9%)を含む呼吸器疾患が31・3%で最も多く、不整脈や急性心筋梗塞の循環器疾患の26・9%、がん9・8%と続いた。低体温症は3・6%、自殺は2・2%だった。
 体の一部でも水に漬かるなど「津波でぬれた」との記述があった人は26・9%。ぬれた人の死因は、循環器疾患が29・7%、呼吸器疾患が27・0%の順で多く、全体の傾向同様、両疾患の合計が半数を超えた。低体温症は10・8%で、全体に占める割合より7・2ポイント高く、津波の影響を大きく受けていたことが分かった。
 年代別はグラフ1の下の通りで、80代が42・2%で最多。65歳以上の高齢者は89・1%に上り、平均年齢は79・7歳だった。
 性別は男性52・4%、女性47・6%。死亡時期は発生から1カ月未満が56・4%、1カ月から半年未満が34・9%で全体の91・3%が半年以内に亡くなった。糖尿病や心疾患など既往症があった人は84・4%に上った。
 復興庁は2012年に岩手、宮城、福島3県の関連死1263人を対象に調査を実施。60代以上が95・5%、複数要因を抽出した原因分析では「避難生活の肉体・精神的疲労」(50・5%)が最多だった。
 河北新報社の今回の調査は、復興庁調査とは異なり、死因や津波の影響などを調べたほか、関連死の原因となった最大要因を分析した。
 帝京大大学院公衆衛生学研究科の坪井基浩医師は「死因は肺炎が最多で、劣悪な避難生活や津波の影響を強く受けていたことが分かった。高齢者は一度身体機能が低下すると回復は難しい。避難環境の改善が急務だ」と指摘する。

「寒さ」要因の23%、「ショック・疲労」に次ぐ

 石巻市の関連死275人の死因に直結した原因を「最大要因」として分析したところ、寒さが2割を超え、被災や避難に伴うショック・疲労に次いで2番目に多かった。3月中旬の東北の寒さが、生死に大きな影響を与えたことが分かった。
 帝京大大学院の坪井基浩医師が、遺族の申請書や審査の議事録などから1人当たり1要因を抽出し、寒さや津波など11項目に分類した。
 結果はグラフ2の通り。ショック・疲労が23・6%で最も多く、寒さは22・9%だった。寒さに該当した人の調書からは停電のため避難場所で暖を取れなかったり、雪が降る中で車中泊するなど当時の過酷な状況が読み取れる。
 津波の13・5%は、直接体がぬれた人のほか、建物が津波被害を受けて避難できなかったケースもあった。
 グラフ外側の大項目の分類では、寒さと津波の寒冷要因が36・4%、寒冷以外の避難環境要因が36・0%。医療要因では病院機能が停止したことによる既往症悪化が6・5%、たん吸引器などの医療機器の中断5・8%と続いた。
 坪井医師は「関連死の背景を全て反映したデータでないが、対策を考える上で意義がある。寒さを含めた避難環境の影響が相当あり、季節や気温を考慮した対策が大事だ」と話す。

 呼吸器疾患・低体温症、60歳境に割合高く

 石巻市の関連死275人の死因を年代別に分析したところ、60代以上は肺炎を含む呼吸器疾患と低体温症が3割以上を占めた。一方、自殺は6人おり、全員が60代未満の現役世代だった。
 年代別の死因内訳はグラフ3の通り。呼吸器疾患で亡くなった割合は60代34・8%、70代36・7%、80代31・9%で各年代で最も高かった。90代以上でも30・4%と、循環器疾患32・1%に次ぐ高さだった。一方、60代未満で呼吸器疾患の割合は10%だった。
 低体温症で亡くなったのは計10人で全て60代以上。各年代の割合は4~5%だった。
 60代未満の関連死20人のうち、死因が自殺だったのは計6人で30%を占めた。40代が5人で10代が1人。震災の影響で不眠症を患っていた40代の男性会社員が仕事上の悩みを抱えて自殺したケースもあった。

[調査の概要]河北新報社は昨年7月以降、岩手、宮城、福島3県の計47自治体を対象に関連死調書を開示請求した。今回は最大被災地・石巻市(直接死3277人、行方不明者418人)の関連死が対象。死亡診断書の他に震災前後の生活状況や治療の経過が書かれた因果関係認定調査票、審査の議事録などを基に分析した。

帝京大・坪井医師に聞く

 石巻市の関連死275人の死因を分析した帝京大大学院の坪井基浩医師に、津波被災地における関連死の特徴や防止策を聞いた。
(聞き手は宮崎伸一、鈴木拓也)
 -死因は呼吸器疾患が目立つ。
 「避難生活で体を動かす機会が減ると、肺機能を含めた身体機能が低下する。高齢者の場合、一度機能が低下すると回復は難しく、劣悪な避難環境に適応できなかった可能性が高い」
 -東北の寒さも影響した。
 「死因の最大要因を抽出した結果、寒さが2割を超えた。高齢者は体温を維持する機能が衰える。避難所では『冬は寒さ、夏は暑さ』への対策が非常に重要だ」
 -石巻市は津波被害が甚大だった。
 「津波を直接かぶった人のうち、7割弱のケースで津波と寒さが死に直結していた。調書では、津波を飲み肺炎になる『津波肺』と明記されたケースは多くはない。ただ、震災後30日以内に発症した肺炎は単に誤嚥(ごえん)によるものではなく、津波の影響を受けた可能性が高い」
 -自殺者は40代に集中した。
 「母数は少ないが、働き盛りに自殺者が多い傾向は出た。この層は社会的なストレスを受ける機会が多い。避難生活中のメンタルサポートなど支援体制を充実すべきだ」
 -震災から10年がたったが、関連死対策は進んでいるか。
 「分析を通し、改めて避難環境の重要性を痛感した。震災後、段ボールベッドが普及するなど状況は大きく改善された。ただ、台風19号(2019年10月)で救護活動をした埼玉県内の避難所では、いまだに雑魚寝をしていた。今回の調査結果を基に避難環境の改善につなげたい」

[つぼい・もとひろ] 帝京大医学部卒。仙台オープン病院、さいたま赤十字病院高度救命救急センター勤務などを経て20年4月から帝京大大学院公衆衛生学研究科専門職学位課程に在籍。外科専門医。さいたま市出身。36歳。
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