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東北電の深夜機器割引、3月末で終了 実質値上げ、顧客困惑

経産省が顧客に回答した文書。東北電に対して指導をした事実が記されている

 東北電力は、電気温水器や蓄熱式電気暖房器などを使う料金プランに適用してきた深夜機器割引を今月末で終了する。一日の電気の使い方が平準化してきたことや省エネの浸透を理由に挙げるが、実質的な値上げとなる顧客からは「終了と理由の関係性が曖昧」「不利益変更に当たり認められない」と不満の声も上がっている。

 東北電は昼間と比べ夜間の電気利用が少なかった1984年以降、平準化に向けて深夜機器割引を導入した。ヒートポンプ機器が次第に浸透し、給湯や冷暖房、調理を電気で賄う「オール電化住宅」は2013年度に同社管内で30万戸を突破。夜間の電気利用が進み、14年3月末で割引の新規適用を終えた。

 その後も適用済みの顧客への割引は続けていたが、「地球環境問題が深刻化する中、高効率なヒートポンプ機器の普及拡大を通じて省エネを一層推進していく観点」(東北電)などを踏まえ、今月末で終了する。深夜機器を利用している顧客に限り、エコキュートや暖房エアコンの購入・設置費用の一部を支援するキャンペーンを12月末まで実施する。

 東北電は割引の件数について「競争上、回答を差し控えたい」と明かさず、終了に伴う影響額も公表していない。ただ、割引の設定がある料金プランのうち時間帯別電灯では、1カ月当たり平均1500円程度の割引がなくなるという。

 仙台市太白区の40代男性は、昨年11月に割引終了の通知を受けた。オール電化のマンションを購入し、12年から割引を受けていた。男性は「地球環境問題や省エネ推進と、割引終了との関連性は間接的で抽象的。一方的な変更は不適切だ」と疑問視する。

 別の顧客は「利用者にとっては実質的な値上げ。割引相当額を夜間電力量単価に反映して値下げを検討してほしい。キャンペーンを行っているが、機器が故障でもしない限り設備投資はできない」と不満を漏らす。

一部顧客「不当な変更」と苦情 経産省「適切な対応を」

 東北電力の深夜機器割引終了を巡り、一部の顧客は昨年11月、電気事業法に基づき「一方的な変更で不当」との苦情を経済産業省に申し出た。同省は同12月、違法な対応はないと判断した上で、東北電に適切に対応するよう指導した。

 電気事業法は小売供給契約や変更の際、小売電気事業者に供給条件の説明義務を課す。経産省は指導で「需要家が料金その他の供給条件を十分に理解した上で小売供給を受けられることは重要」と指摘する。

 東北電発電・販売カンパニー生活提案部の担当者は河北新報社の取材に、指導を受けた事実を認め「引き続きしっかりとお客さまに説明し、一層丁寧に対応していく」と説明する。

 その上で「割引終了と理由の関係性は明確で、合理的な変更と考えている。コスト削減という観点はない。終了後も夜間の電力量単価が安い料金プランは引き続きお使いいただける」と話す。

停電時割引も終了 東北電「新サービスで還元したい」

 東北電力は、自然災害や送配電設備の故障などで停電した場合の電気料金割引も今月末で終了する。停電の減少が主な理由だが、大規模災害に伴う停電が相次ぐ中、顧客からは割引継続を求める声も出ている。

 停電割引は、1951年に東北電が創立された当初からある制度。地震、大雪、台風などで1日のうち延べ1時間以上電気が止まった場合、基本料金の4%を割り引く。電気設備の技術革新などで近年は停電が減少。東北電によると、1需要家当たりの年間の停電は2015年度が0・08回(11分)、19年度は0・09回(13分)と低水準を維持している。

 停電割引終了の対象は「低圧自由料金プラン」の契約者となる。東北電発電・販売カンパニー販売推進部の担当者は「割引を適用する状況が減る一方、業務処理のコストが固定的に発生している。効率化を図り、新たなサービスなどで還元したい」と説明する。

 自然災害で被災した契約者らに対しては、今後も電気料金の支払期限延長などの特別措置を取るという。

 河北新報社に意見を寄せた顧客は「利用者は(20年4月に送配電部門を分社化した)東北電ネットワークと個別契約していない。東北電が同社に割引相当額を請求し、今まで通り割引するべきだ」と訴える。

[深夜機器割引]深夜機器(電気温水器や蓄熱式電気暖房器など)を使用し、割引の設定がある料金プランを契約した顧客に適用する。割引の設定があるプランは時間帯別電灯A・B、よりそう+ナイト8・10、深夜電力Bの5種類。割引額は機器やプランによって異なり、電気温水器や蓄熱式電気暖房器と時間帯別電灯Aを組み合わせた場合、1キロボルトアンペア当たり200円前後となる。

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