されど110円 消えぬ不満 東北電検針票、4月から有料化 高齢者置き去りに
「年金生活の父には、たかが110円 されど110円です」。仙台市の50代女性から「読者とともに 特別報道室」に切実な訴えが届いた。きっかけは東北電力の「ペーパーレス化」。紙の検針票や領収書を4月から順次やめ、電気使用量や料金を原則、インターネット上で知らせる取り組みだ。書面での通知を続けるには月110円の発行手数料がかかる。
女性の父は80代で東北電の電気を長く利用してきた。検針票は内容を隅々まで確認して保管している。収入の柱は年金。数年前に妻を亡くした。スマートフォンやパソコンは持っていない。
父は有料化にショックを受け、憤りながらも「110円を節約するにはもっと頑張らないと」と語り、手数料を負担して書面を受け取るつもりだという。
女性は「電気料金は生活に付いてくる出費。ネット環境が整っていない高齢者や経済的弱者に対しては、引き続き書面を無料にしてほしい」と柔軟な対応を求める。
東北電によると、ペーパーレス化は省資源化推進が目的。対象の顧客は東北6県と新潟県の約540万件に上る。全ての対象者が応じた場合、年間でA4判コピー用紙3228万枚相当の紙の減少につながり、二酸化炭素(CO2)の排出を約200トン削減する効果があるという。
対象約540万件のうち、実際に手数料が必要なのは「低圧自由料金プラン」の契約者。「よりそう+eねっとバリュー」「時間帯別電灯A」などが該当する。
一方、2016年4月の電力小売り全面自由化前からプランが変わっていない「特定小売供給約款」の顧客らについては手数料が発生しないという。こちらは「従量電灯B」「低圧電力」などが含まれる。
東北電発電・販売カンパニー生活提案部の担当者は「特定小売供給約款は、国の方針で自由料金に移るまでの経過措置料金という位置付け。需要家保護の観点から有料化の対象外とした」と説明する。
東北電のコールセンターには、女性のケースと同様に「年を取っていてパソコンが使えない」などの声が寄せられているという。担当者は「お客さまにいろいろな事情があることは十分理解しているが、環境問題の取り組みを確実に進めるため、多くの方にペーパーレス化にご協力いただきたい」と理解を求める。
ペーパーレスで相次ぐ有料化
大手電力各社は検針票や領収書のペーパーレス化を進めており、それに伴う書面の有料化も相次いでいる。
東京電力エナジーパートナー(EP)は「多くのお客さまがパソコンやスマートフォンを日常的に使用している状況を踏まえ、電気料金などの確認をウェブでお願いすることにした」と説明。北陸電力は「スマートメーター」による遠隔検針の普及などを理由に挙げる。
1通当たりの書面発行手数料は東電EPと北陸電、関西電力が110円、中国電力は55円。
北海道電力と中部電力ミライズは手数料を取っていない。
関連リンク
- ・「てんでんこ」震災後に浸透 被災3県6割、全国でも4割 地方紙15社共同アンケート
- ・障害者作業所、苦しい運営 コロナ禍で製品販売と受託作業が減少
- ・大崎「すずかけの里」運営法人が虐待隠す? 家族・利用者に説明会行わず
- ・障害者施設の虐待年3件「再発防止策、不十分」 体触りパワハラも 大崎
- ・山形・遊佐町消防団運営問題 報酬や手当受領、団員の4%