<ストーリーズ>諦めぬ誓い 人生の指針/阿部 翔人さん(26)石巻市

「先生より遅かったらもう1本だぞ」。野球部員にハッパを掛けて駆け出す阿部さん(左)。まだまだ現役さながらの動きでいいお手本だ=7日、石巻市民球場
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 「苦難を乗り越えることができれば、その先に必ず大きな幸せが待っていると信じています」。震災翌年の2012年、石巻工高主将として選抜高校野球大会の開会式で選手宣誓をした阿部翔人(しょうと)さん(26)。「今もあの言葉が背中を押してくれている」。人生の指針だ。
 被災当時は生きるだけで精いっぱい。それでも、グラウンドの泥をかき、全国から野球道具の支援を受けて甲子園出場をつかんだ。「あのときは周囲が環境を用意してくれた。今度は僕が環境をつくって生徒の背中を押してあげたい」。
 17年の春に故郷に戻り、石巻高で非常勤講師を務めながらコーチとして野球部で指導する。教え子には「自分で限界を決めず、厳しいことから逃げないで」と願う。将来、困難に直面したとき、諦めずに立ち向かえる強さが備わるように。
 今年の選抜では仙台育英高の島貫丞(じょう)主将(17)が選手宣誓をした。再び東北から届けられたメッセージに巡り合わせを感じる阿部さん。「僕らの思いを受け継いでくれた。希望になるという気持ちを大事にして頑張ってほしい」と喜んだ。
 昨秋、5度目の挑戦で教員採用試験に合格。4月からは正教員として宮城県内の公立高で教壇に立つ。次の目標は監督として甲子園に戻ること。自分を培ってくれた野球を通じて、未来を担う心の強い子どもたちを育てていく。
(写真部・佐藤琢磨)

阿部さんの選手宣誓全文

 宣誓。東日本大震災から1年。日本は復興の真っ最中です。被災をされた方々の中には、苦しくて心の整理がつかず、今も当時のことや亡くなられた方を忘れられず、悲しみに暮れている方がたくさんいます。人は誰でも、答えのない悲しみを受け入れることは苦しくてつらいことです。
 しかし、日本が一つになり、その苦難を乗り越えることができれば、その先に必ず大きな幸せが待っていると信じています。だからこそ日本中に届けます。感動、勇気、そして笑顔を。見せましょう。日本の底力、絆を。われわれ高校球児ができること。それは全力で戦い抜き、最後まで諦めないことです。今、野球ができることに感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います。

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