宮城の汚染廃、処理2割に届かず 指定廃の処分場は依然棚上げ

 東京電力福島第1原発事故で生じた放射性廃棄物の処理が宮城県内で停滞している。市町村が担う汚染廃棄物の処理が終了した量は2割に満たず、国が責任を持つ指定廃棄物に至っては、最終処分場の選定が棚上げされたままだ。原発事故から10年が経過した本年度、県は2017年7月以来の議論を再開し、事態を打開したい考えだ。
(布施谷吉一、喜田浩一)

 国と県が17年7月に公表した汚染廃の推定保管量と、各市町村が21年3月末時点で把握する処理量を調べた。県内の推定保管量は3万6045トンで、処理量は19%の6743トンにとどまる。26市町村のうち15市町でいまだに処理が終わっていない。

 指定廃の県内推計量は3413トン。最終処分場を1カ所設置する方針を掲げた国は14年1月、栗原、大和、加美の3市町を候補地に挙げたが、地元は猛反発した。

 加美町は国の現地調査も拒否して膠着(こうちゃく)状態に陥り、村井嘉浩知事は16年3月、現地調査の自粛を国に要請。候補地の返上を含めて再検討するという、事実上の白紙撤回に追い込まれた。

 放射性廃棄物がテーマの市町村長会議は17年7月の第14回を最後に開かれておらず、処分場の建設は宙に浮いたままだ。

 東日本大震災から10年を前に、村井知事は3月8日の定例記者会見で「県内の廃棄物は県民に大きく関わる問題。強く関与していく」と強調した。協議再開に向け、国や市町村と調整する意欲を示している。

[放射性廃棄物]放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、1キログラム当たり8000ベクレルを基準に区別されている。8000ベクレル以下の汚染廃は一般ごみと同様の処理が可能とされ、市町村が担当する。8000ベクレルを超える指定廃は国が長期管理する。特措法の基本方針では、指定廃は発生した都道府県内で処理する。

1000トン以上の8市町で遅れ顕著 住民の反対根強く

 宮城県内の汚染廃棄物の推定保管量と処理量(表)を見ると、26市町村のうち、処理完了が11市町村、処理中が10市町、本格処理に至っていないのが5市町となっている。1000トン以上を抱える8市町で、処理の遅れが目立つ。

 汚染廃の処理方法は(1)焼却(白石市)(2)すき込みなど農林地還元(登米、栗原、加美など13市町)(3)焼却と農林地還元の併用(角田、大崎、蔵王、丸森など12市町村)-に分かれる。

 遅れている市町は一般ごみとの混焼や農地へのすき込み、堆肥化などを計画しており、周辺環境への影響を懸念する住民の反対が根強い。

 県内で保管量が最も多い加美町は、汚染牧草4094トンのうち400ベクレル以下の1153トンを町有地にすき込む予定。17年度に3カ所で実証試験を行い、19年度の本格実施を目指したが、住民説明会で反対が相次ぎ、着手できていない。

 町民から焼却を求める声も上がるが、猪股洋文町長は「すき込みを不退転の決意で進める」と譲らない。

 栗原市は独自の堆肥化施設を整備する方針だが、建設計画が浮上した栗駒地区では「水源地や観光地に近い場所に造るな」と反対運動が起きた。25日投開票の市長選が迫り、身動きが取れない状況だ。

 県南部では19年5月に焼却が始まったが、同10月の台風19号豪雨で大きな被害を受け、災害ごみの処理を優先。ごみ処理に共同で取り組む仙南2市7町の枠組みで本年度、汚染廃の焼却が再開される見通し。

 原発事故から10年が過ぎてなお、一時保管されている指定廃棄物は、さらに先行きが不透明となっている。県内のある首長は「処理を進めるにしても、住民への説明に時間がかかる。市町村の負担が大きすぎる」と指摘。問題解決に向け、県が主導するよう求める。

宮城県内の汚染廃棄物の保管量と処理量

〔注〕保管量は2016年6~10月に国と県が行った調査の推定値。処理量は21年3月末現在で市町村が把握する量。進行率は保管量に対する処理量の割合。仙台市(519トン)と利府町(28トン)は調査前に焼却済み

河北新報のメルマガ登録はこちら
原発事故・放射線」

復興再興

あの日から

復興の歩み


企画特集

先頭に戻る