「あの日から」第11部 公務員(3) 気仙沼・鈴木麻莉夏さん アイドル活動で街を元気に

ホヤぼーやとポーズを取る鈴木さん=6日、気仙沼市大浦の蜂ケ崎

 「♪ホーヤ ホーヤ ホヤぼーや」「♪みんな大好き気仙沼」

 気仙沼市が公開する動画「ホヤぼーやと一緒に踊ろう!」。市観光課の鈴木麻莉夏(まりか)さん(23)が、観光キャラクター「ホヤぼーや」と歌に合わせて軽快なダンスを披露する。

 東日本大震災が起きた年から気仙沼ご当地アイドル「SCKガールズ」に所属し、昨春、任期付き職員になった。公務員と「二刀流」で街を盛り上げる。「アイドル活動で各地を巡り、多くの人に励まされた。『おかげさまで元気になれたよ』と、復興した気仙沼の姿をみんなに見せたい」と声を弾ませる。

 地元出身で、震災時は中学1年。高台の自宅や家族に被害はなかったが、家の近くから見下ろす湾の周りは津波と火災で壊滅的な状態に。母親は逃げてきた人々の手助けに奔走した。

 「自分は恵まれてるな」。どこか後ろめたさを抱えていた2011年11月、不意に先輩から「ボランティアやらない?」と誘われた。集合場所のドアを開けると、目に飛び込んできたのは10人ほどの女の子。誕生したてのSCKメンバーが、アイドルグループAKB48の「ヘビーローテーション」を踊っていた。

 SCKは「産地」「直送」「気仙沼」の頭文字だ。震災で楽しみが奪われた女の子に輝ける場をと、音楽活動をする市民有志が企画した。呼び掛けに応えてメンバーが集まり、交代を重ねながらこれまでに計32人が参加した。今は13~24歳の7人が在籍する。

 主に週末、仙台や東京など市内外のイベントを回り、ピーク時は年間100回以上出演した。鮮やかな赤い立て襟のジャケットとスカートをまとい、ステージを彩る。「震災を売りにするな」と心ない言葉も掛けられたが、支援への感謝や復興への思いを歌に込め、ファンと交流を重ねた。

 加入するまでアイドルに関心がなかった。「歌も踊りも、トークも苦手」。ステージの立ち位置はいつも年下のメンバーより後ろ。マイクもなかなか握れなかった。

 悔しさが募り、レッスンに励んだ。移動中も上達のこつを聞き、人気グループの曲を研究。SCK代表の佐藤健さん(43)が「諦めの悪さはメンバーで1番」と振り返るほどの努力を重ねた。

 高校卒業後、一時民間企業に勤めてからも活動を続け、いつしかチームのまとめ役となった。

 被災地のイベントでは、街の再生に向け熱っぽく話す大人たちが印象的だった。悲壮感はみじんもない。「素直に夢を語っていいんだ」。任期付き職員に手を挙げたのは、自分もまちづくりに関わりたいという思いが芽生えたからだった。

 新型コロナウイルス禍でSCKの活動はできない。職員として観光プロモーションに頭を悩ませるが、イベント運営や動画編集には、アイドル活動で培ったノウハウを生かしている。裏方として戦略を練る仕事にやりがいを感じている。

 「♪響け! ありがとうの言葉 大声で叫ぶよ」。何度もステージで歌ってきたフレーズだ。「伝え切れていない感謝を伝えたい」。思いを胸に公務に打ち込む。
(鈴木悠太)

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