一力遼の一碁一会 「囲碁の専門用語」 一般的な意味と違いも

一力遼の一碁一会

 前回は、囲碁から一般に広まった言葉を紹介しました。今回は、囲碁の棋士がよく使う言い回しの中で特殊な意味を持つものを取り上げます。
 囲碁では合理的な打ち方を「筋(すじ)」、ある局面における有力な手を「手筋」と言います。また、形が良くて理想的な打ち方は「筋が良い」と表現します。
 囲碁は最後に地(じ)が多い方が勝ちますが、地を増やしていく過程で互いの石を取ったり取られたりを繰り返します。石の強弱については、「重い」や「厚い」という言い方をすることがあります。
 「重い」や「軽い」は物質的な重量ではなく、負担の軽重を表します。取られてしまうと相手の地が大きくなるような石は「重い」、取られても構わないような石は「軽い」と表現し、後者の方が肯定的なニュアンスで使われます。
 「厚い」は、「攻められる心配のない石」や「相手の石を攻めること」「自身の地を増やすのに役立つ状態」を指します。逆に取られる恐れがある状態は「薄い」と言います。
 「厚い」に近い言葉に「手厚い」があります。辞書では「取り扱いが丁寧である」と説明されていますが、囲碁で「手厚い形勢」と言う場合は「優勢」の状態を表します。また「手厚い一手」は「自身の弱点をなくす一手」のことで、どちらも一般的な意味合いとは違いがあります。
 「味」は「自身の弱点になりそうな場所」を表し、頻繁に使用されます。「手厚い」状態のことは「味が良い」と表現します。
 扱いが難しい単語を一つ紹介します。「辛い」という漢字は「つらい」と「からい」の2通りの読み方がありますね。「つらい」は一般的な意味と同じく、負のイメージで用います。
 一方、「からい」は「目に見える得が大きい状態」のことで、こちらは有利な側を形容する言葉として使用されます。「辛い」は読み方で全く異なる意味になるので、解説の際は漢字での表記を避けるようにしています。
 棋士は、囲碁用語を日常会話で用いることがあります。私も「筋が良い」や「からい」だけでなく、「敗着(後悔すること)」や「打ち過ぎ(頑張り過ぎ)」など、無意識のうちに囲碁になぞらえた言葉を使っているようです。
(囲碁棋士)

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