復興庁(3)津波復興拠点/新制度手探り、再建遅れ

燃油タンクの屋上から再建した敷地を見下ろす菅野さん。奥には造船団地が構える=3月17日

 気仙沼市朝日町の気仙沼港。6ヘクタールの敷地に、津波に耐え得る特殊コンクリートで覆われた燃油タンクが並ぶ。そばに船舶を防潮堤内に引き入れる最新鋭の造船所が立つ。両施設は2019年に完成した。

 「水産の街に必ず再建しなければならなかった。ようやく完成できた」

 市と燃油施設を共同整備した石油販売「気仙沼商会」の菅野幸多(こうた)さん(57)が振り返る。

 気仙沼港の燃油タンクは東日本大震災の津波に遭い、23基中22基が破損。造船所の作業エリアも地盤沈下で海面に沈んだ。基幹産業の水産業の拠点整備は市にとって急務だった。

 市が目を付けたのが国の津波復興拠点整備事業。復興交付金の対象メニューで被災現場の声をきっかけに新設された制度でもある。

 土地をかさ上げできる点は区画整理と同じだが、土地を買収でき、集団移転事業の対象外だった役場や工場、倉庫など業務施設を緊急に整備できるスピード感が売り。「単に震災前に戻すのでは未来はない。新制度はオリジナリティーがある」と菅原茂市長(63)が飛び付き、整備目標を「震災から5年後」と定めた。

 復興庁に打診すると意外な言葉が返ってきた。「沿岸部に…ですか?」

 津波復興拠点事業は安全な高台や内陸への移転が前提で、海沿いは想定されていなかった。「造船所やタンクは海沿いに造らなければ意味がない」と市は訴えた。1年近く調査費が付かず、造成費の交付は15年6月。結局は認められたとはいえ、本格再建は目標より4年ずれ込んだ。

 復興庁の対応は柔軟性に欠けた。市はタンカーが給油のため接岸する桟橋の建設も新制度の関連事業として申請したものの、はねられた。

 「復興拠点が海上にあるのはおかしい」という理屈だ。市は「桟橋がないと給油できない」と、他設備も含め約3億7000万円を市の復興基金から捻出した。

 津波復興拠点事業は被災3県の17市町24地区が活用した。スピード感は欠け、全ての造成完了に約8年を要した。

 制度を所管した国土交通省の元幹部は「新制度のためノウハウがなく手探りだった。将来のモデルになるような津波復興拠点はなかった」と指摘した上で、「被災後に急ごしらえで対応するのではなく、平時からシミュレーションしておくことが求められる」と語る。

 国交省によると、津波復興拠点事業は復興特区法に基づく「特例措置」として認められた制度にすぎず、南海トラフ巨大地震など今後の災害で活用できるかはっきりしていない。

 津波で公共施設が軒並み流失した宮城県南三陸町は事業をフル活用し、高台の2地区に役場や保育所など7施設の建設にこぎ着けた。

 及川明総務課長(58)は「心残りは制度が常設されなかったこと。次に災害が起きた時に、南三陸と同じように路頭に迷う自治体を出したくない」と訴える。

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