復興庁(4)地元負担/膨らむ事業費に歯止め

災害公営住宅が並ぶ石巻市新蛇田地区で復興まちづくりの説明を聞く復興ツアーの参加者ら=2019年11月23日

 国が全額負担してきた復興事業の方針を巡り、竹下亘元復興相(74)は2014年9月の就任直後、副大臣や政務官を集めた朝会議で覚悟をにじませた。

 「俺たちはこれから悪役になる」

 復興庁内部で国の集中復興期間(2011~15年度)後の5年間の議論がスタート。「このままなら事業費は青天井だ。どこかで歯止めをかけなければ…」と懸念が広がっていた。

 被災地は高台移転や土地区画整理など大規模事業が進む。時間がたつにつれて人口は流出し、当初描いた事業計画と現実にギャップが生じていた。ところが自治体は増大する歳出を気にも留めず、計画の縮小に消極的と映った。

 コスト意識を芽生えさせるにはどうすればいいか。政府は15年6月、全額国費を見直し、16年度以降の一部事業に地元負担を導入することを決定した。

 「財政状況は悪くない。大丈夫、耐えられる」。当時、復興大臣補佐官だった谷公一氏(69)は独自にまとめたリポートを竹下復興相に提出していた。

 震災前後の税収の変化、自治体の貯金に当たる財政調整基金の推移など、岩手、宮城、福島3県と沿岸市町村の財政状況を調査。小規模自治体が多いことに配慮し、負担率は1・0~3・3%に抑えた。

 谷氏は兵庫県職員として1995年の阪神大震災を経験した。財政支援は原則復旧までという国の方針で、被災地は復興事業費の半分を負担。県は今なお借金返済にあえぐ。厳しさは分かっている。それでも全額国費は「やり過ぎ」に思えた。

 「兵庫も乗り切ったのだから東北も」という単純な考えからではない。東北では市町村道の維持管理費も国でみてほしいと期待する自治体まで現れた。

 「自分たちの道路すら管理できないなんて自治体の体を成していない。地元負担ゼロを継続すれば、結局は自治体のためにならないのではないか」。谷氏は、復興とその後の地域振興を担う被災自治体の覚悟そのものを問うた。

 被災地側にも反省はある。石巻市は被災地最多の災害公営住宅4456戸を確保し、宮城県内で唯一、民間の賃貸物件も借り上げた。住民には20年の入居期限が付く一方、自治体にとっては初期投資が抑えられ、退去すれば維持費が不要になる。

 採用は222戸、全体の約5%にとどまった。市の復興対策室長や復興政策部長を務めた星雅俊さん(66)は「早期整備が必要で当時は十分考えられなかったが、地元負担が増えたら知恵や工夫を出せたかもしれない」と自戒する。

 兵庫県は阪神から10年となるのに合わせ、学識経験者ら98人で構成する委員会が1年半にわたり復興を総括的に検証。459の提言をまとめた。

 こうした検証の動きは東日本大震災の被災自治体では鈍い。政府の復興構想会議の委員だった河田恵昭関西大特任教授は「多額の借金を負った兵庫は地元主体の検証ができる。しかし、国が金を出した東日本はできない」と指摘する。

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