岩手県大船渡市中心部の商業施設「キャッセン大船渡」は、外観が茶色で統一された飲食店や小売店などの約30テナントが並ぶ。平日は地元住民、週末は家族連れや観光客でにぎわう。
「街を育てる活動が実を結んできた」。市職員の佐藤大基さん(43)は、新しい街の息吹と再生の手応えを感じている。「キャッセン」は「いらっしゃい」を意味する方言だ。
JR大船渡駅周辺は東日本大震災で壊滅的な被害を受け、商店や住宅がひしめく街並みが消えた。市は津波復興拠点整備事業を活用し、10・4ヘクタールで商業地の再生を目指した。
佐藤さんは2013年度、大船渡駅周辺の整備担当になった。01年の入庁以来、戸籍や住民票、税務を扱う部署が長く、土木分野は初めてだった。
着任当時は再生の方向性がようやく見えてきた段階。「今から都市計画を勉強しても追い付かない。いろいろな人の協力を得ながら豊かな街にしよう」。手探りの日々が始まった。
駅周辺の再生には「エリアマネジメント」という考え方を取り入れた。国土交通省は「地域の環境や価値を維持、向上させるための住民や事業主による主体的な取り組み」と定義する。それを大船渡は「チャレンジと検証を繰り返すまち」と捉えた。
佐藤さんや専門家が考案した官民協働の仕組みはこうだ。市は土地を安く貸す代わりに、隣接する地元企業に分担金を出してもらう。「キャッセン大船渡」のテナントを運営するまちづくり会社が、入居する事業者の賃料と分担金をにぎわいづくりに生かす。テナントが閉店しても入れ替えれば「シャッター化」しない。
「例えば家も年代や家族構成で居心地が違う。価値観は変化するから常に考え、行動を続け、見直すことができる街にする」
約90の地権者や事業者の賛同を得るため、協力協定を結ぶパートナー企業の担当者と足しげく通った。再生の理念や青写真を丁寧に説明し、疑問に答えた。
「1人で完結できるプロフェッショナルではない。未熟さは隠さず、一生懸命訴えた」。その熱意が理解者を増やしていった。
大船渡駅周辺一帯を管理するまちづくり会社が15年12月に設立され、翌年にホテルやショッピングセンターが開業。17年4月に「キャッセン大船渡」のオープンにこぎ着けた。
当初は毎週末、まちづくり会社が子ども向けの体験会などを催してにぎわいをつくった。徐々に市民団体が手掛ける行事も企画され、17年度に107回だったイベントが19年度は178回になった。新型コロナウイルス禍の20年度もわずかながら回数がさらに増えた。
「自分たちの居場所として定着した。人に恵まれ、ここまで来られた」と感慨深げに語る。
3月末まで在籍した災害復興局は廃止され、駅周辺の再生は都市整備部が引き継いだ。商工港湾部に異動した佐藤さんは、後任者に「市民や事業者からの求めにノーと言わない姿勢を持ち続けて」と伝えた。
「新たな価値を生み出し、進化を続けられる街こそが魅力的。それを行政が止めてはいけない」。商業者、市民と一体となって回し始めた市街地活性化の歯車。力強く動き続けることを願っている。
(田柳暁)
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