DVから殺人未遂に… 被害届ためらいエスカレート防げず 仙台の事件追う

DVの相談を呼び掛けるチラシやパンフレット=仙台市青葉区のエル・パーク仙台

 ドメスティックバイオレンス(DV)が事件に発展するケースが後を絶たない。新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛を背景に全国の相談件数は過去最高を更新しているが、関係機関も命に関わる事案ですらフォローできていない。3月末に仙台市内で発生した事件から課題を探った。(報道部・氏家清志)

夫婦間でも犯罪

 3月27日午後10時半ごろ、若林区土樋のマンション1階の共用部分で女性(59)が血を流して倒れている状態で見つかった。背中には深い刺し傷があり、女性は辛うじて一命を取り留めた。
 宮城県警若林署は、殺人未遂の疑いで、直前まで一緒にいた事実婚の夫(71)を逮捕した。2人は夫婦間のトラブルを抱えていたという。捜査関係者は「一歩間違えれば命が危なかった」と語る。
 予兆はあった。女性は昨年5月~今年2月に計5回、夫からのDVやけんかの相談を警察にしていた。警察はDV事案として夫に「犯罪になる」と再三警告を出していたが防げなかった。
 障壁の一つになったのは、女性が被害届を出さなかったことだった。
 被害届を出さなかった理由は不明だが、一般的に夫婦間のDVでは、被害者が離婚や別居を決意しないと告訴などに踏み切らないケースが多い。刑事処分後の逆恨みを恐れたり、子どもがいる場合は「親を犯罪者にしたくない」との心理が働いたりするためだ。
 捜査関係者は「家庭内のトラブルは毎日のように交番に寄せられる。だが被害届がない状態で逮捕し、有罪まで持ち込むのは難しい。夫婦間でも暴力は犯罪になると自覚してほしい」と語る。

支援と啓発必要

 警察庁の統計によると、2020年に全国の警察に寄せられたDV相談は前年を436件上回る8万2643件。01年のDV防止法施行以降、最多となった。宮城県警への相談件数も過去最高の2386件に上った。
 新型コロナの影響で在宅時間が長くなり、家庭内暴力が増えているためとみられる。コロナ収束まで増加傾向は続く可能性がある。
 加害者を逮捕すれば一時的にせよ被害を止めることは可能だ。だが、介入のハードルの高さがDV被害を見えにくくし、早期の解決を難しくしている側面がある。
 DV被害者の支援に取り組むNPO法人「ハーティ仙台」(仙台市)の八幡悦子代表理事は「多くの殺人事件の背景にDVがある。警察だけで被害者を動かすことは難しい。行政、NPOなどが連携し『危ないから離れよう』と思ってもらえるよう継続的な支援と啓発が必要だ」と訴える。

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