ある朝、紅茶の匂いが消えた <連載・コロナ下のウィーン(1)>

ウィーンを代表する建造物の一つ、シュテファン大聖堂=2019年8月

 新型コロナウイルスが全世界で猛威を振るっています。日本でもようやくワクチン接種が始まりましたが、なお収束は見えません。市民生活の苦しさはどこも変わりませんが、コロナ検査に対する考え方や医療事情となると、お国柄でずいぶん違いがあるようです。仙台市出身で、現在はオーストリアの病院に勤務する斎藤若奈医師に「コロナ下のウィーン」の医療や暮らしをつづってもらいました。河北新報オンラインニュースの独自記事としてお届けします。
(編集局コンテンツセンター・上田敬)

 ついにきたか。もし私が陽性だったら…。来週は2回の当直が入っているし、専門医資格の大事な試験もある。家族は、幼稚園は、とさまざまな心配が頭の中を駆け巡ります。

 土曜の朝、ゆったりと紅茶を飲んでいたら、匂いがしないことに気がついたのです。間違って買ったかとパックを見直しても、やはりアールグレー。匂いがしないということは、コロナかも。そういえば、軽く鼻が詰まって頭も重い。ワクチンは接種したけれど、接種後だから症状が軽いのかもしれない…。

 私は今、コロナ病棟で働いており、毎日、患者さんと接しています。職員の抗原検査は週2回義務付けられていて、おとといは陰性。防御はきちんとしているものの、そういえばマスクがちょっと緩んでいたかも、と気になり出す。

 朝一番で買い物を済ませる予定だったけれど、おとなしくしていようと思い、夫に買い物を頼んでいたら子どもがニコニコしながらやってきて言いました。

 「いい考えがあるよ。保険証を持って薬局に行くと無料でコロナテストキットがもらえるから、それをやったら。僕はもう週3回学校で自己検査しているから、プロだよ!」

 ウィーンでは今、とにかく検査をして感染を抑えようと、市がさまざまな策を講じています。人口あたりの検査数は、2月時点で欧州連合(EU)でも3番目に入るそうです(リンク❶)。

 症状がある人は、ホットラインに電話すると自宅に「モバイル検査チーム」が来てくれます。無症状の人には9カ所のテスト会場(リンク❷)のほかに、次のような3種類の無料の自己検査が提供されています。

 ①15歳以上のウィーン市民を対象に薬局で抗原検査キット5回分を配布(リンク❸)

 ②うがいによるPCR検査
 ③学校で子どもの自己抗原検査を2日おきに週3回義務化。

 このうち、うがいによるPCRは、ドラッグストアやスーパーマーケットに提出でき、家族の1人がドラッグストアに行くと家族1人当たり4回分の検査キットがもらえます。家でうがいによって採取した検体は、スーパーマーケットやガソリンスタンドのボックスに入れると回収されて24時間以内にアプリに結果が返ってきます。やり方についての動画が公開されていますが、スマートフォンがないと、結果を受け取るのは難しそうです(リンク❹)。

 学校での抗原検査を希望しない人は、ディスタンスラーニング(登校しないで自宅学習する)も可能となっています。抗原検査の説明ビデオ(リンク❺)では「鼻をほじるのと同じ感じだから大丈夫だよ」と言っていたのが衝撃的でした…。
=第2回配信に続く=

新型コロナウイルスの抗原検査キット
子供向けに自己抗原検査のやり方を紹介する動画(ユーチューブより)
世界中から多くの観光客が訪れるシェーンブルン宮殿=2019年8月

斎藤若奈(さいとう・わかな) 1973年生まれ。仙台市出身、山形大卒。専門は呼吸器・感染症。長崎大学病院、仙台医療センター勤務などを経て、国際結婚を機に、現在はオーストリア・ウィーン在住。出産、育児をしながら2016年にオーストリアの医師免許を取得し、20年からウィーン市の公立病院で研修医として再出発。言葉と文化の壁に毎日ぶつかりながらも、家事育児に協力的な夫と子供2人に支えられ奮闘中。

新型コロナワクチンの接種場所に記念撮影用のボードが設置されていた。写真に収まる筆者

[河北新報編集デスクより]関連リンクはドイツ語や英語のサイトが中心ですが、ご利用のブラウザによっては翻訳機能を使って日本語に変換して読むことが可能です。

リンク❶、DER STANDARDのニュースサイト
リンク❷、コロナの検査場や検体を提出できる場所を地図上に示したウィーン市のサイト
リンク❸、薬局で配布している抗原検査キットの使い方を紹介する、薬剤師会のウェブサイト
リンク❹、うがいによるPCR検査のサイト
リンク❺、学校での自己抗原検査の説明動画
河北新報のメルマガ登録はこちら
新型コロナ関連

企画特集

先頭に戻る