土壁の店内は古い町屋を改装した。だしで炊いたご飯に魚介やオーガニック野菜が盛り付けられたわっぱ飯「京わっぱ」を目当てに、昼時は女性やカップルでにぎわう。
京都市伏見区の飲食店「きのわ」。代表を務める西山祐子さんは福島市の出身だ。京わっぱは会津地方のわっぱ飯を京都風に独自にアレンジした。
結婚後に地元に戻り、子育て中に東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に遭った。放射線の影響を考えて当時2歳だった長女の真理子さん(12)を連れてひとまず東京へ。その3カ月後に京都に移った。
福島市など避難指示が出ていない地域から移った住民は「自主避難者」と呼ばれる。祐子さんは両親と共に、いち早く支援を表明した京都府の公務員住宅に身を寄せた。地元に残った夫との二重生活。府内で約1400人に上った避難者も母子が多かった。
避難者でつくる有志の会の発足を経て、府内全域に支援の手を広げようと、2011年12月に避難者団体「みんなの手」を設立した。代表を務め、店が拠点になっている。
約500キロ離れた避難生活でも古里の人々との出会いがあった。11年冬に講演会で知り合った二本松市の生産者は600種類の野菜の放射性セシウムを測定するなど、消費者に安全な生産物を食べてもらおうと真摯(しんし)に取り組んでいた。福島県職員は全国にできた避難者の会を「帰還支援」の枠組みで応援しようと尽力していた。
福島県の農作物に対する世間の見方や、避難者が抱えてしまった県に対する不信感。「それをイメージではなく、自分の目で見て、触れて、感じて判断してもらおう」
みんなの手が盆と正月に京都-福島間で運行する帰省バスツアーが、福島の現状を見聞きする場を兼ねるようになった。
県の補助も得て16年度からは「ふるさととつながろうツアー」と銘打って実施する。関西などの避難者に参加を呼び掛け、年数回、現地で復興に汗を流す人たちの話に耳を傾けている。
ツアーは福島の自然に触れ、歴史や震災の教訓も学ぶ。福島の良さを再発見して帰還する避難者もいた。
今年3月には初めて双葉地方の帰還困難区域を訪れた。他地域より復興が遅れていることに心を痛めた人、何とかしたいと思った人、これが現実と受け止めた人-。反応はさまざまだが、多くが「訪れて良かった」とアンケートに記した。
一家も転機を迎えた。この春、真理子さんが東京都内の中学に合格した。福島と行き来するうち、「大好きな福島で先生になって子どもたちに教える」という目標ができた。神奈川県内に引っ越して7月に夫婦と娘、父の家族4人がそろった生活が始まる。
祐子さんは今後も関西の避難者や移住者をサポートしながら店の経営を続ける。福島にもこれまで以上に足を運ぶつもりだ。「全国に散らばった福島の人と古里とをつなぐ。これを私のライフワークとしてやっていく」。どこに住んでいても古里との距離は変わらない。そう信じている。
(高橋鉄男)
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