「復興再考」第11部 被災者支援(4) 広域避難/人数に相違 見えぬ実態

岡山県内の避難者数の実態を解き明かそうとする服部さん=9日、岡山市の「ほっと岡山」

 「県外避難者の現状や全体像が分からないことが最も大きな問題だ」

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年が迫る2020年秋。福島県の委託で避難者の「生活再建支援拠点」を運営する埼玉県のNPO法人など8団体が、平沢勝栄復興相に実態調査を要望した。

 「公表された数以上に避難者は相当いるんじゃないか」。要望した団体の一つ、岡山市の「ほっと岡山」代表理事の服部育代さん(49)も、毎月公表される数字を悩ましく感じている。

 4月時点で復興庁が集計した岡山県内の避難者数は「17市町村で計929人」。それ以外にも岡山県から支援ニュースが届いたり、避難者登録をしていなかったりする数字に現れない「避難者」を、服部さんはサポートしてきた。

 関東など原発事故の避難区域外から避難した「自主避難者」が半数を超え、生活困窮や孤立といった問題が横たわる。服部さんは「初めて相談に訪れる人が今もいる。正確な実態をつかまないと、どんな支援や制度が必要なのか見極められない」と訴える。

 復興庁によると、岩手、宮城、福島の被災3県からの県外避難者は計3万2594人。3県以外の自主避難者も全国に身を寄せる。

 避難者数の根拠になっているのが、総務省が2011年4月に稼働した「全国避難者情報システム」。避難者自身が避難先市町村に登録し、システムを通じて市町村の登録数を都道府県が集計している。避難元からは広報紙などが届く。

 ただ登録は避難者の自己申告に基づく「手上げ方式」で、帰郷しても取り下げないと情報が残るなど課題が多い。自治体によって避難者の捉え方や把握手法もばらばらだ。

 数字の不確かさは宮城県でも目立つ。

 宮城県からの県外避難者数は、復興庁の4月時点の公表では3599人なのに対し、県の集計はわずか87人にとどまる。県は避難者情報システムや独自の名簿を基に意向調査し、「帰郷の意思がある人」だけを避難者にカウントしているためだ。

 県内への避難者も復興庁は1275人で、福島県が公表する「宮城県内への避難者」は2730人。賃貸住宅などの居住者数が著しく食い違う。仙台を拠点に支援活動を続ける「東北圏地域づくりコンソーシアム」の高田篤事務局長(48)は「数字の中身がないことがよく分かる」と語る。

 広域避難に詳しい川崎医療福祉大(岡山県倉敷市)の田並尚恵准教授(54)は「現状のままでは実態は分からない。情報を自治体任せにせず、国などが一元的に把握する仕組みをつくる必要がある」と指摘する。

 1995年の阪神大震災では約5万4700人の県外避難者がいた-と兵庫県は推計するが、実態は分かっていない。広範囲で被害が想定される南海トラフ巨大地震などに備え、避難者をどう把握し、支援するかも問われている。

 ほっと岡山の服部さんの言葉に力がこもる。

 「災害に次々に襲われているのに、避難者を支える法制度はバージョンアップせず、広域避難の問題はたなざらしにされている。名簿の共有など一人一人をきちんと拾い上げてほしい」

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